勇者、号泣した長編エロ物語を皆にも是非読んでほしい


「だってほら、見てくださいよ。ラクスのたわわなワガママボディに、パンテーヌのきゃわわなロリボディ。リラっちのいない悲しみと寂しさとストレスは、こいつらにセクハラしまくることでしか癒やせません! 二人共クソがつくほど生意気ですが、それを屈服させるのがまた堪らないんですよねー。リラっちが戻ってくるまでの間に、立派なエロフに調教してやるつもりです!」



 ゲダヨが笑顔で任せろとばかりに胸を叩く。途端に俺はがっくりと項垂れた。


 前言撤回。いい話なんかじゃねえ、こいつ、最低だ。何もわかっちゃいない。



 エルフにエロいことするのは、オークと決まってるんだよ! 体の小さな種族でもゴブリンは許せるが、ドワーフはありえない!



 薄い本じゃ、ドワーフなんてなかなか屈服しないエルフに業を煮やしたオークに依頼されて、エロ道具を作る役しかないだろうが!


 ちょっと厚い薄い本なら、森で拾ったエルフを我が子のように可愛がって育てるものの、愛する娘を奴隷として売ることを目的に拐おうとした悪い人間に立ち向かって殺される不憫保護者ポジションだろうが!


 そして親の復讐を誓ったエルフが自分のエロい体を武器に、オーク、ゴブリン、オーガ、サイクロプス達を味方につけて人間に報復する、エロだけでなくストーリーも熱い壮大な復讐劇が始まるんだろうが!



 つまり何が言いたいかというと、エルフにドワーフは邪道ということだ! 異論は認めない!!



 そんなわけで今度は俺も、ラクスとパンテーヌがゲダヨをフルボッコにするのを止めなかった。


 その間、インテルフィは他の魔道士達に囲まれて、女神様女神様とワーキャー言われながらサイン書いたり握手したりしてた。勇者の俺のところには、誰も来なかった。解せぬ。



 ラクス達が気の済むまで暴行を加え尽くすと、インテルフィはズタボロになったゲダヨに笑顔で再度問いかけた。



「この二人を、連れて行くことを許可してくださる?」


「そうだなぁ……インテルフィっちがおっぱい揉ませてくれるなら、考えてもいいかなぁ?」



 殴られ蹴られ燃やされ凍らされして半死半生といった状態なのに、ゲダヨはこの期に及んでアホなことを言い、ニヘラ〜ッと笑ってみせた。


 すげえな……魔法にかかっているとはいえ、全身の苦痛すらスルーしてここまで自分の欲望を曝け出してくるとは。同じ男として、リスペクトしたくなってきたぜ……。



「女神様に何ということを!」

「どこまでゲスな奴なんだ!」

「こんな奴を副団長になんてしておけない!」

「そうだそうだ! キモいこととエロいことしか考えてない副団長なんか解任してしまえ!」



 が、俺の気の迷いを振り払うように、魔道士達だけでなく、庁舎にいたお客さん達までもが解任コールを上げ始めた。


 かーいーにん! かーいーにん! と全員が一体になって湧く様は、いつか観た人気舞台のアンコールを思い出させるほど熱くエモーショナルだった。



「ん……いてて、何だ? 何がどうなって……あれっ!? やけにスースーすると思ったら裸!? しかもヒゲがない!? 一体どうして……ってててて、全身が痛い! お、おい、どういうことだ、これは!?」



 熱狂の渦の中、主役であるゲダヨが慌てた声を上げる。このタイミングで魔法が解けるとは……さすがに同情を禁じ得ない。



「ゲダヨ副団長様……ああ、もう副団長ではないようですわね。ラクスさんとパンテーヌさんは、わたくし達と同行していただくことになりましたので、後はよろしくお願いいたします」


「えっ!? いやインテルフィ様、先程も申しましたように、この二人はちょっと……」



 魔法にかかっていた間の記憶がないゲダヨに、俺はインテルフィの隣からニヤニヤ笑いで教えてさしあげた。



「ゲダヨさーん、ラクスとパンテーヌにエロいことしようとしてたんだよなー? ついでにインテルフィのおっぱい狙ってたのも、リラ団長にしていたキモい行動の数々もバレてるぞー? いっそゲダヨから、ゲスダヨに改名したらどうですかぁー?」


「なっ……何故それを!? まさか、魔法? いやしかし、お前のようなオーラも何もない奴に、この私が魔法にかけられるなど……!」



 ゲダヨが俺を睨む。けれど俺は平然と口角を釣り上げ、言ってやった。



「それがありえるのさ。何たって俺は、伝説の勇者様だからな!」



 カッコ良く決まったところにちょうど良く、昼休憩の終了を知らせるチャイムが鳴る。



「ではわたくし達は、リラ団長を探しに行ってまいりますわ。皆様、ごきげんよう」



 チャイムの音が終わると同時にインテルフィが華やかな笑顔で締めの挨拶をし、皆の拍手に送られながら俺達は庁舎を後にした。


 ゲダヨが何か喚いていたが、知ったこっちゃない。どれだけ言い訳しようが、あいつはもう副団長の座にいられなくなるだろう。威厳も評価も、地に落ちてマイナスにまで突き抜けたに違いないからな。


 フン、嫉妬に狂ってこのイケメン勇者であらせられる俺様を蔑ろにした罰だ!



 あー、スカッとしたあ!

 ざまぁあああ! いい気味ぃいいい!

 復讐、ぎんもぢいいいいいいいーー!!



 ああ、代償はどうなったかって?

 安心してくれ。しっかり奪われはしたが、皆の前で無様な姿を晒すようなことにはならなかったよ。


 お守りのサークレットがあるおかげでな!

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