元王女の逆異世界転生で、転生先は極道。環境だけでお腹いっぱいになりそうなところに、粗暴ながら一本義な主人公と、柔和ながら芯の強い親友、そしてお嬢様口調のお嬢様。
更に幻死病という主題が入ってきて、情報が飽和してしまいそうなところですが、それを感じさせない勢いのある文章がとても魅力的な作品でした。
一方で、主人公の独白が緩めな雰囲気のため、シリアスシーンで読者が置いていかれることがあるかもしれないとも感じました。
キャラクターの掛け合いによる、楽しい空気感が非常に心地よいものでしたので、是非とも多作も読ませて頂きたいと思いました!
■物語は足し算と掛け算でできている。一見関連のなさそうな異なるファクターを巧みに組み合わせて全く新しいものを生み出す。それが物語の世界観を組み立てるということだ。その組み合わせ方の法則を、新しいものを見つけ出した時にオリジナリティとは価値を見出す
■この作品に登場する基本ファクターは、何もどこかで見たことのあるものだ
【魔法世界×不遇の王女×現実世界×極道の孫娘×オタク趣味×心の病】
これらのファクターを掛け合わせて生み出されたものは何物にも似ていない全く新しい物語だった。そう、この作品の作者は彼なりの新しい法則をオリジナリティとして見つけ出したのだ
■我が身の不遇を憂い異世界に存在する物語作品に心恋い焦がれ、自ら死を選ぶことでその異世界へと旅立ってしまう。そこで彼女が望む楽しみに満ち溢れた人生を目指すのだが、よりによって彼女が異世界で生まれ落ちたのは任侠ヤクザの孫娘。思いっきり、世間常識から斜め上のドリフトかました人生を余儀なくされる。
しかし主人公のヒロインはめげない。ふたつの世界で培った圧倒的な力と底なしのバイタリティーであくまでも自分が望む自由を謳歌しようとする。だがそんな彼女に舞い込んだ仕事は、心の中の幻想が現実を蝕むという最悪の心の病への対処。
ゴミ屋敷のような心象世界の中でもがき苦しむ少女を前に圧倒的な超マイペースで主人公のヒロインは真っ直ぐに突き進む。そして、誰にも知られることのない苦しみを抱えた少女に、極めてぶっきらぼうな救いの手を差し伸べるのだ。不器用で乱暴だがその真っ直ぐな心意気が何よりも心地いい。
主人公である鬼龍神無のキャラクター造形の成功が、物語に卓越した光を与えている。完成度の高い良質のエンターテイメント作品である。
「そういえば、異世界からの転生者だったっけ……?」と自問したくなるぐらい、「こっちの世界」に馴染み過ぎな女子にして、漢(おとこ)――女子漢、鬼頭神無。
それは好漢といっても過言でもないくらい、豪快にして明快な女子である。
そんな彼女が天使の悪戯か、悪魔の仕業か、とある少女の心の壁(物理)に挑む。
果たして、彼女の拳(これも物理)は、その壁を砕けるか――。
……この「(物理)」が比喩でないところが、作者様の設定の妙としか言いようがありません。
心の壁に挑むまでの経緯も、笑いつつも引き込まれてしまいます。
面白くて、パワフル。これに尽きます。ぜひぜひ、ご一読を。
作品をフォローいただいたご縁でこの物語に出会いました。
更新分まで読み終えましたので、レビューさせていただきます。
圧倒される文章力。出だしからアクセル全開で、物語の世界に引きずり込まれます。その威力の源は、文章力と主人公の存在。異世界から現代日本の極道に転生してくるというパンチの効いた設定に加えて、彼女のそのキャラクター性。
常に何事にも全力で望み、ひたすらに真っ直ぐな彼女の姿に、いつの間にか惹かれてしまいました。その癖オタク趣味であり、たまに笑わせてくる地の文なんかも、良い意味でズルいですね。
作品はまだまだ序盤ということで、今後の展開がとても楽しみです。
他の皆さまも是非読んでみてください。