象牙の櫛の付喪神

作者 戸谷真子

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★★★ Excellent!!!

主人公=伊織さんの祖母である静さんのお葬式。
そこに不意に現れた綺麗な少年風の付喪神の願い。
それは静さんと共に葬られること。
しかし伊織さんは目の前の、生まれたばかりの生命にそんなことは出来ないと、付喪神の要求を拒否してしまう。
そこから伊織さんの悩みが生まれて……。

静さんの櫛が付喪神として体を与えられたのはなぜなのか。
伊織さんの疑問は、そのまま私が日頃抱いている疑問に結びつきました。
そしてこの作品には答えが書かれていました。
心が洗われ、軽くなりました。

読み終わったあと、無意識に自分の身の回りや風景に思いを馳せてしまうような、人生の明度を上げてくれる小説でした。

★★★ Excellent!!!

主人公・伊織が祖母の死から間もなくして出会った、櫛の付喪神が伊織に新たな光景を見せてくれます。
祖母の死で別れの意味を悟った伊織が、付喪神との奇妙なつながりを大切にしようとする姿勢が、文章全体に優しい手触り感を与えています。
付喪神のはかなげな様子も相まって、物語のあとも二人を見守りたい気持ちにさせるお話です。

★★★ Excellent!!!

亡き祖母を弔う際、彼女の大切にしていた象牙の櫛の付喪神が誕生しました。
美しい少年の姿をした付喪神は主人公・伊織に依頼をします。
それは、祖母の亡骸と一緒に櫛を焼いてくれという願い。
生まれたばかりであるにもかかわらず、慕う祖母と共に死んでゆくことを望む付喪神の依頼に、伊織は応じるのか――

柔らかで丁寧な語り口が典雅で、命のはかなさ美しさをそのまますくい取ったよう。
肉体をもって生きるということの意味を問い直す、素敵な作品です。

★★★ Excellent!!!

一人の人物の終わりから始まるこの物語。
その人のお葬式で孫である主人公が一人ロウソクの番をする。

この時点ですでに静かな時間の中にいて、彼は祖母との思い出を思い起こしている。
そしてそれが動きだすのだ。

その動きは他の人には見えなくて、彼にだけ見えている。
祖母の大事にしていた象牙の櫛の付喪神。
祖母と付喪神の間にあるものが何なのか、多くは語られてはいないけれど、共に過ごした時間がとても大事なのは伝わってくる。
彼の願いはただ一つ。
祖母である静と共に葬られる事。

でも主人公の伊織が彼に感じるものも大事で、この時点で伊織は彼の思いを拒否してしまう。
それに対して彼は少しだけ伊織を受け入れるのだ。

静と過ごした時間と伊織と過ごす時間。
何だかそこに普遍性を見る気がした。

結局、付喪神にとっての静との思い出の場所が、同じように伊織との思い出の場所になる。
一つの静という雫が付喪神を象って水輪を描くように広がって、伊織にたどり着く。そんな感覚の物語にさらにいろんな感じるものがあって……

それは読む人の中に静に息づくように思うのだ。
読んで欲しい物語の一つです。

★★ Very Good!!

 主人公のひたむきな姿が清々しくて良かった。あやかし物は昨今流行っているようだが、本作は安直な恋愛などに(※恋愛そのものが悪いのではない。念のため)傾かず、自分の感受性に沿って独自性を打ち出している点に好感が持てる。
 主人公の祖母が微笑みながら見守る姿が想像できそうだ。
 詳細本作。

★★★ Excellent!!!

3日間、この物語に見合うレビューを考えました。
何度も読み返して、どういう言葉を使えばこの素晴らしさが伝わるのだろう?と。

そして、読む度により深く心に沁み、胸が温かいもので満たされました。

読むほどに魅力は増して、私の拙い語彙力では、伝えきれなすぎて…

結局「読んで欲しい!」ということしか言えないです。
そして浸って欲しいです。
これぞファンタジー、これぞ小説!という世界に。

ちなみに、私以外の方々の書かれた、この作品へのレビューが、すごく素敵です。そちらもお読み頂くと、さらに楽しめるのではと思います。



★★★ Excellent!!!

東風吹かば にほひをこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな

かの菅原道真が詠んだ歌です。
この歌に詠まれた梅の花は大宰府天満宮にあり、現在でも春には美しい花を咲かせています。この梅は通称「飛梅」といわれています。その昔、政争に敗れた菅原道真が京の都から左遷されたとき、道真の邸に植わっていたこの梅の木があるじたる道真を想い、その後を追い掛けて大宰府まで飛んでいったという伝説が残っているからです。

木があるじを想うように、物たる櫛もあるじを想う。
されどもひとの壽命と物の壽命とでは大きな違いがあります。故に《後を追いたい》と願うのです――――

ほんとうに素敵な物語でした。一万文字という字数のなかにこれだけの深い物語を収められた、著者様の筆力に脱帽致しております。
誰かを想うことの暖かさが綴られた美しいこの物語を、是非ともひとりでも多くの読者様に読んでいただきたく存じます。

★★★ Excellent!!!

天満宮の部分的なワードや、風景描写が丁寧に書かれていて梅の風景や香りまで感じられました。

そう、正に花鳥風月。鳥の描写が無かったのが残念ですが、短編だからきついだろうと思いました。

付喪神や土地神(違ったらすいません、菅原の道真っぽいなとは感じました)など和に特化した作品は分かりやすく素晴らしいと思いました。

和というカテゴリーでのコミカライズを見て見たいと思いました!

個人的には、付喪神が女性だったらモロ好みの作品になりましたが、他のレビューを見た感じ、こっち系が好きな人にはいいのかな?と思えました。