第16話精霊視の開眼
「なん……だ……?」
急に目の前の視界が変化した。急激に光が押し寄せ眩しさで目を細める。そこら中に鮮やかな光が浮かんでおり不規則に動き回っている。
俺がその光景を眺めていると……。
「エルト君。もしや目覚めたのか?」
ヨミさんはスプーンを片手にそう言った。俺がそちらを向くと全身を覆うオーラのようなものが見えた。
「えっ、もう? だって、まだ2週間しか経ってないわよ?」
正面ではやや薄いオーラを纏ったセレナが驚きの表情を浮かべていた。彼女は片手にパンを持っている。
「いや、エルトのオーラも増していたからな。俺はそろそろだと思っていたぞ」
左ではフォークを片手にフィルが頷いている。丁度朝食を摂っている最中だったのだ。
「これが……精霊視というやつなのか?」
急に視界が変わったので混乱したが、予備知識があったのでそう推測する。
「うむ。これでエルト君も精霊を使役する資格を得たというわけじゃな」
ヨミさんの言葉に俺は頷くのだった。
「さて、今日から精霊の扱いについて訓練しましょうか」
朝食を終えると俺たちは村の広場へと集合していた。そこでは俺が精霊視を使えるようになったことを聞きつけたエルフたちが待ち構えていた。全員が大小のオーラを放っていることから精霊視を会得している者たちらしい。
「ああ、宜しく頼む」
「まずは精霊の種類について説明するわね。この世界には実に多くの精霊が存在しているの。その中でも代表とされるのが【土】【風】【水】【火】の4属性精霊と【光】【闇】の精霊よ」
セレナがそう言うと精霊を使役できるエルフたちが前に出てそれぞれの精霊を見せてくれる。
「精霊には微精霊・低級精霊・中級精霊・上級精霊・大精霊・精霊王という呼び方があるわ。うしろの呼び名になるにしたがって世界に強い影響力を持ち、知性を持つようになるの」
「今の俺でも精霊を使役して風や火をおこすことはできるのか?」
俺の質問にセレナは首を横に振る。
「精霊を使役するにはまずその属性の精霊と契約する必要があるの。魅力のステータスが高ければ高いほど多くの精霊が寄ってくるわ。例えば魅力が2000あるお父様は上級精霊と契約しているの。兄さんは低級精霊を1属性と中級精霊を2属性。私は低級精霊3属性と中級精霊1属性ね」
そう言ってそれぞれの精霊を見せてくる。
「今周囲に浮かんでいる光は皆と違う形をしているな。これが微精霊なのか?」
それぞれが具現化しているのは低精霊にしろ中級精霊にしろ人と同じ形をとっている。
「精霊は名前を付けられることで初めて個体としての姿をとることができるのよ」
俺の疑問に対してセレナが捕捉説明をしてくれた。
「すると、皆の精霊も名前を付けたから今の形になったということなのか?」
精霊に名前を付けることで固体化できるということはここにいるエルフたちもそうしたということだろう。
「そういう人もいるけどそうじゃない人もいるわ」
「というと?」
俺は首を傾げると詳しい説明を求めた。
「魅力が高い人は多くの精霊に好かれるようになるわ。中には高位の精霊とかも存在しているの。そう言った精霊が現れた時に本人のコスト枠が足りていれば精霊と契約する事が出来るのよ」
コスト枠というのはセレナのステータスを見た時にあった(5/5)という部分だろう。これがヨミさんの場合は(10/10)、フィルなら(7/7)だったことから魅力が高い者ほどコスト枠が大きいということになる。
単純計算ならば魅力200ごとに1の枠ということだろう。
元々俺がここに滞在して精霊視を覚えたのはこの迷いの森から出るためだった。精霊ならば方向感覚が狂うことがないらしく、森を抜けられるとのこと。
なので、精霊と契約できる条件が整った時点で森の脱出を実行に移してもよいのだが……。
「まずはその辺の微精霊に名前を付けて契約して徐々に力と魅力が高まってきたら中級精霊や上級精霊と契約するのが普通のやり方よ」
だが、どうせならそれなりに強い精霊と契約する方が良い。
今のところ遠距離攻撃を出来るのは邪神のスキルのみなのだ。これから森を抜けるにしたがって遠距離攻撃が必要になる場面があるだろう。俺は出来ることなら邪神のスキルをなるべく使いたくはない。邪神が滅んでしまっているので回数を補充できないからだ。
森を抜けるまでにブラッディオーガなど邪神スキルで倒さなければいけない相手に遭遇することが考えられる。その時に精霊を使役できるかどうかで消費回数に差がでると思った。
「セレナ」
「ん。なぁに?」
セレナの精霊との契約の仕方や成長のさせ方についての説明を遮ると俺は言った。
「この辺で強い精霊に会える場所に案内して欲しいんだが」
「はい?」
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