第78話 幕間~成長すると問題も見えてくる~

 キャラクターシートに記載された経験点の数字に、思わず頬がにやける。

 ざっと通常成功の倍近い経験値。これはキャンペーンクリアのボーナスだろうか。

 ミッション大成功と判定されたってことは……多分ないだろうな。

 そうだとしたら、何が通常成功だったんだって話だし。


 ともかくこれだけ経験点が入れば僕もポンも十分な成長が可能だ。

 流石にこのLV帯になると、一度の冒険で劇的に成長することはないから、あくまで“十分”止まりなわけだが。


 前置きはこれぐらいにして、早速僕の成長をご覧いただこう。


 【基礎能力】

 筋力:16 耐久:13 器用:16

 敏捷:13 知力:14→15(UP) 精神:13


 【ジョブ】

 ファイター:LV4→5(UP) シャーマン:LV4

 スカウト:LV1 セージ:LV1


 【スキル】

 剣戦闘:LV4→5(UP) 武器防御:LV4

 回避:LV3→4(UP)

 強撃:LV2→3(UP)

 精霊感応/光:LV3

 精霊感応/風:LV3

 危険感知:LV2

 調理:LV2 並列思考:LV1→2(UP)

 礼儀作法:LV1(NEW)


 まず基礎能力について、今回は知力が自然に上昇していた。

 これは頭を使うことが多かったからではなく、多様な立場の人たちと触れ合い経験を積むことができたからだろうと考えている。


 ジョブレベルはファイターをLV5に成長させた。

 ここまでくると戦士としてはかなりの腕利き。小さな町ならトップに君臨できるLVである。

 初依頼でゴブリンに殺されかけてから早五か月……実に感慨深い。

 スキルも戦士系を中心に堅実に伸ばした。

 新しく取得したのは礼儀作法。前回もそうだったが、このLVになると高貴な方々と接する機会も増えてくる。最低限のマナーは習得しておく必要があるだろう。


 倍近く経験点が入った割に地味な成長だ、などと言ってはいけない。

 LV5以上に必要な経験点は本当に多いのだ。今回は成長がありませんと宣言するPCだって珍しくない。

 したがって、いったんLV5まで到達するとジョブの一本伸ばしを終え、マルチジョブへ移行するPCが倍増する。

 LV5から6に成長させる経験点があれば、他のジョブをLV4まで伸ばせるのだ。

 誰だって他のジョブに浮気したくもなるというもの。


 ちなみにこの段階でミレウスというキャラクターは魔法戦士としてほぼ完成している。

 当然、本当の意味での完成は遥か先だが、剣と魔法を駆使した汎用性の高いキャラクターというコンセプトは満たしたと言えるだろう。

 装甲が薄いという欠点はあるものの、精霊魔法による自己回復、デバフを駆使すれば、同LV帯の戦士にはまず後れをとるまい。

 今後の成長では戦闘能力以外の部分にも目を向ける必要があるだろう。


 続いてポンの成長。

 ポンも僕と同様にLV5に到達している。


 【基礎能力】

 筋力:5→6(UP) 耐久:8 器用:13

 敏捷:13 知力:8 精神:6


 【ジョブ】

 スカウト:LV4→5(UP) ポーター:LV1


 【スキル】

 追跡:LV3→4(UP) 聞き耳:LV3

 危険感知:LV3→4(UP) 罠感知:LV3

 忍び足:LV3→4(UP)

 投擲:LV4→5(UP)

 回避:LV2→3(UP)

 頑健:LV2 変装:LV1

 毒知識:LV1(NEW)


 まず基礎能力は筋力が自然に成長していた。これはよくミンウをおんぶしていたからかな?

 ジョブはスカウトをLV5に伸ばした。

 実はこれ、シーフギルドの幹部候補に名を連ねてもおかしくないLV。

 ポンはギルドには所属していないし、所属していてもコボルトが実際に幹部になることは難しいだろうけれど。


 スキルは既存のものを中心に満遍なく伸ばしている。

 スカウトは役割上必要なスキルが多く、中々他に手を伸ばす余裕がない。

 新たに取得したのは毒知識。まぁ、最低限の知識は必要だよね。


 うん。改めて見るとポンもかなり成長した。

 種族特性を活かした高い感知能力と、身を隠しながらの投擲。

 決定力、耐久性には欠けるが、立ち回り次第でいくらでもそれはカバーできる。


 とは言え、スカウト一本伸ばしではこれ以上の目に見えた成長は難しくなってきた。

 単純にLV6以上への成長が難しいことに加え、普通の仕事だとこれ以上LVを上げてもオーバースペックとなる可能性がある。

 今後はもう少し、できることの幅を広げていく必要があるだろうが……まぁこれは、ポンの希望も聞きながら検討だな。


 僕とポンの成長はこんなところ。

 キャラクターとして一先ずの完成をみただけに、今後の成長をどうすべきかが悩ましい。

 まぁ、贅沢な悩みではある。


 気になっているのは三人パーティという人数の少なさ。

 現状、ホアンさんを守る必要がないからどうにかなっているが、前衛が僕一人というのは正直厳しい。

 護衛依頼中でも、敵が複数だと一人でポンと依頼人を同時に守ることは難しいわけだし。

 前回のゲイツさんのような、戦える依頼主なんてそうそういるものじゃない。

 他にもウィザードの援護が欲しいとか言い出せばきりがないのだが、まずは前衛戦力だろう。


 今の僕らなら、募集すれば多分希望者はいるだろうけど……正直どうだろうな。

 実力的なものもあるけど、人格的、相性的に。

 コボルト、ゴーストっていうメンバーをどう思うかっていうのもあるし、僕も結構人見知りする。

 矛盾しているけど、感情的にはこの三人でやってく方が楽だっていうのも確かだ。


 それに、もう一つ。

 ホアンさんはLV5のプリースト。

 入った時は格上だった彼に、僕らは追い付いたことになる。

 ゴーストであるホアンさんは今後も成長しない。そのことを彼がどう感じるか。

 ヒーラーと言う役割とゴーストの物理攻撃無効の特殊性を考えれば、彼が足手まといになるわけではないのだが。


 そう考えると、僕ら個としては成長してもパーティとしてはまだまだ問題だらけだな。

 完成なんて自惚れてる場合じゃない。

 一つ一つ、皆で考えながら前に進んでいくとしましょうか。

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