第27話 幕間~成長・ゴーストはPCじゃないので~

 依頼を終えてレイヴァンの町に帰還した僕は、初めてのまともな冒険成功に頬を緩ませていた。

 今までの冒険は、誰かに助けられて辛うじて生き延びただけだったから、この達成感はひとしおだ。


 金銭面でも本来の依頼であったお使いの報酬に加え、今回は賊を討伐したことによるボーナスがあった。

 ソートの村からのお礼に、ギルドからの報奨金も出た。

 賊そのものの討伐より、奴隷商の情報提供が功績としては大きかったらしい。

 うん、賊が一人でも生き残っててくれて、本当に良かった。

 僕らパーティ人数が少ない分、一人当たりの報酬は割がいいんだよ。

 ちょっといい装備に買い替えてもいいかもしれないな……魔法の装備とか。

 いや、それはまだ早いか? でも値段ぐらいはチェックしておこう。


 当然、経験点も入っている。

 気持ちのいい成功だったから経験点も倍増、というわけではないけれど。

 やっぱり成長の瞬間というのは心が躍る。

 伸ばしたい技能は沢山あるし、でも将来のことを考えると温存もしておきたいし。

 自分のことだけでなくポンのこともあるので、成長方針には丸一日頭を悩ませた。

 その間、ついニヤニヤしてしまって、周りから変な目で見られるのはもう慣れたもの。


 さあ、それでは成長した僕の技能をご覧いただこう。


 【ジョブ】

 ファイター:LV2→3(UP) シャーマン:LV2

 スカウト:LV1 セージ:LV1


 【スキル】

 剣戦闘:LV2→3(UP) 武器防御:LV2

 回避:LV1 強撃:LV1(NEW)

 精霊感応/光:LV2 精霊感応/風:LV1(NEW)

 危険感知:LV1 調理:LV2


 今回は白兵戦能力、特に攻撃力を中心に成長させた形だ。

 メイン技能であるファイターと剣戦闘を成長させた僕は、戦士としてはそろそろ駆け出しを脱しようかというレベル。

 これに新たに取得した強撃スキルで、これまで不足していた攻撃力を補った。

 強撃スキルは剣戦闘のようなパッシブスキルではなくアクティブスキル。

 体力を消費するため連発はできないが、いざという時に通常より強力な攻撃を放つことができる。


 もう一つ新たに取得したのが精霊感応/風のスキルだ。

 このスキルは特定系統の精霊魔法に熟達し、条件付きでシャーマン技能レベル以上の魔法も使えるようになるスキルだ。

 風系統の精霊魔法は低レベルでは便利系のものが多く、正直あまり人気のない系統ではある。

 だが、今までの冒険では何かと助けられており、僕の冒険スタイルには合っているのかも、と取得してみた。

 成長さえすれば戦闘に探索にと大活躍の系統だから腐ることはないだろうし。


 基礎能力の成長はなし。

 今までは経験点を使用せずとも、一部の能力や技能が成長していたが今回それはなかったようだ。

 まあ、短期間でそうそう成長なんてするものじゃないし、普通はこんなものだろう。


 続いては、今回大活躍だったポンの成長だ。


 【ジョブ】

 スカウト:LV1→2(UP) ポーター:LV1


 【スキル】

 追跡:LV2→3(UP) 聞き耳:LV2

 危険感知:LV1→2(UP) 

 罠感知:LV1→2(UP)

 忍び足:LV1(NEW)

 投擲:LV1


 うん。なんか、一気にスキルが充実して、僕より優秀な感じがする。

 回避スキルなどの取得も考えたが、そもそもポンの場合、その状況に追い詰められた時点でアウトだろう。

 それよりもまず、危険を回避する方向にリソースを注いだ。

 僕自身も直接戦闘はあまり得意とは言えないわけだし。

 ちなみに、追跡スキルの成長に関しては経験点を使用してしない。

 今回大活躍だったし、元々種族的な適性があったと考えれば妥当な成長だろう。


 うん。あとはまぁ……非常に報告したくないというか、言いづらいというか……


「やぁ、どうしたんだい? 一人で百面相して」

「黙れ亡霊。とっとと逝け」

「ひどいな、君!? 何だか僕に対する扱いが急にぞんざいになってないかい?」

「ユーリちゃんみたいに可愛い子ならともかく、何で亡霊に礼儀を払う必要があるんだ」

「そうだけどさ……」


 僕の頭上でいじける透けた男。ホアンさんだ。

 何というか、彼は昇天の仕方が分からないらしく、そのまま僕に憑いてきてしまった。


 彼を見かけたプリーストが彼を祓おうとした一幕もあったが、全く浄化の魔法が効かなかった。

 どうも彼は一〇年以上ゴーストを続けてきたせいか、この世との結びつきが異常に強いらしい。

 また、彼自身も神官であり、人に害を加えたこともないためか、浄化の対象となる不浄の存在と判定されていないのではないかとも、そのプリーストは言っていた。

 亡霊というより、精霊に近い存在に変質しているのではないか、と。


 僕の脳にはポンと同じように彼のキャラクターシートが浮かんでしまっている。

 違いがあるとすれば、未使用経験点の欄が黒塗りで、成長の見込みがないという点だろうか。

 仲間判定されたみたいで非常に不満なのだが、一応内容をお示ししておこう。


 名前:ホアン 種族:ゴースト(?)


 【基礎能力】

 筋力:―  耐久:―  器用:10

 敏捷:12 知力:16 精神:19


 【特殊能力】

 透過  浮遊


 【ジョブ】

 プリースト(ライナス):LV5 セージ:LV3

 ファイター:LV1


 【スキル】

 薬学:LV4 応急手当:LV3

 神学:LV3 歴史知識:LV2

 礼儀作法:LV1 毒知識:LV2

 農作業:LV2 看護:LV1

 槌戦闘:LV1 盾:LV1


 うん。それなりに経験を積んでいるだけあって優秀な能力だ。

 ただ、ファイター系の技能は持ってはいるものの、実体がないので完全に技能が死んでいる。

 ……ゴーストだけに、とか言わないぞ。


 特殊能力に憑依とか呪殺とか、そういうのがない点は素直に安心した。

 それがあったら、流石に僕も放置できない。


 プリースト技能は優秀だが、本人曰くあまり使いたくないらしい。

 というのも、ゴーストである彼にとって精神力は存在力そのもの。

 ちょっとした魔法ならいいのだが、使い過ぎると存在が薄れてしまって思考もおぼつかなくなるとか。

 そのまま消えてしまえばいいのにとは思うが、しばらく経つと復活する。


 まあ、ちょっとしたポーションと知恵袋が憑いてきたと、前向きに考えるとしようか。


 さて、そんなこんなで僕らもそれなりに成長してきた。

 そろそろ普通の依頼も受けてみたいけど……

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