第2話

 土曜日の放課後。俺たちは勉強会をするために、あるフードコートに来ていた。


 すでに昼食は食べ終わり、勉強道具を開いている。これから勉強するのは、勝と秀明の2人ともが苦手としている数学だ。


「はぁ……。マジで分からん……」


「……どこだ?」


 秀明の呟きに、利光が反応する。苦戦している秀明であったが、利光が教えることで何とか進めているようだ。


「……信護。ここ、分かるか?」


「ん?ああ。ここはこの公式を使えばだな……」


 俺の左隣に座る勝が質問してきたので、俺はその問題の解き方を教える。全て教えるのでは、勝の勉強にならないからだ。


「お、ほんとだ。サンキュー」


 勝はそう言って、その問題に集中しなおした。勝の学力は、秀明よりはマシなものだ。


 それでも、俺や桜蘭とは少し離れていて、利光には遠く及ばない学力ではあるが。すると、桜蘭が俺の肩をツンツンとつついた。


「ん?どうした?桜蘭」


「ちょっと喉渇いちゃった。飲み物買いに行ってもいい?」


「ああ。じゃあ、一緒に行こうぜ。俺も丁度喉渇いてたし」


 桜蘭がしてきた問いに、俺はそう返した。俺としても、何か飲み物が欲しいところだったのだ。


「お前らは飲み物いらないのか?」


「ああ。水で充分だ。こいつらはちゃんと勉強させておく」


 俺が利光たちにそう聞くと、利光は勝と秀明を鋭い目で見ながらそう言ってくれた。そんな利光の言葉に、勝と秀明はビクリと体を震わせる。


「おう。頼んだ。じゃあ行こうぜ、桜蘭」


「うん。信護君」


 俺が桜蘭に声をかけると、桜蘭が頷いてくれる。俺と桜蘭は立ち上がって、席から離れて歩き出した。


「どこ行こっか?」


「んー……。まあ、あそこでいいんじゃねえか?」


 俺が指をさしたのは、タピオカミルクティーが売られている店だった。桜蘭と初めて遊んだ時も、違う店ではあるが同じものを飲んだはずだ。


「あ、タピオカミルクティーだね。信護君と2人で遊んだ時も、一緒に飲んだよね?」


「ああ。そうだな。いいか?」


「うん。もちろんだよ」


 桜蘭が頷いてくれたので、俺は桜蘭と共にタピオカミルクティーの店へと歩みを進める。その店に到着すると、俺と桜蘭はメニューを見た。


「どれも美味しそうだな~……。信護君はどれにする?」


「うーん……。俺はまあ、シンプルにしようかな」


「じゃあ、僕もそれにしようかな」


 桜蘭がそう言うので、俺はレジの前に行く。そして店員に、同じものを2つ注文した。


 俺はまとめて金を払って、注文口へと行く。すると桜蘭が、俺に駆け寄ってきた。


「頼んでもらってごめんね。お金渡すよ」


「いや、いいよ。俺のおごりで」


「え?い、いいの?」


「おう」


 俺が桜蘭の問いに頷くと、タピオカミルクティーが出てきた。俺と桜蘭は受け取るために、受取口へ行く。


「お待たせしました~」


「ありがとうございます。ほら、桜蘭も」


「あ、ありがとう……」


「ふふっ。素敵な彼女さんですね」


 定員の言葉に、俺はクスリと笑ってしまう。何が彼女か。桜蘭は男だというのに。


「いや、俺たちは――」


「あれ?お兄ちゃん?」


「先、輩?」


 俺が否定しようとした矢先、後ろから声が聞こえてきた。俺がタピオカミルクティーを持って振り返ると、そこには市菜と伊野宮がいた。

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