第66話
時間は流れ、最後の種目の時間だ。組対抗リレーに出場する俺は、美保に照花、勝と会場へと向かっていた。
「しかし、ここまで分からなくなるものかねえ……」
「ほんとにねー!どこが優勝してもおかしくないぐらいの接戦だもん!」
そうなのだ。勝と照花の言う通り、これから行われる組対抗リレーの結果によっては、どの組にも優勝の可能性が残されている。
俺たちの結果次第で、勝敗が決まるのだ。1位を取ることができれば、優勝確実。
ならば、1位を取れるように頑張って走るしかない。赤組で、優勝するために。
「……頑張ろうな。俺たち赤組で、優勝できるように」
「そうだね。頑張って、先輩たちに繋げよう」
俺がそう言うと、美保も続いてくれる。それに、勝と照花も頷いた。
「おう。せっかくだし、勝ちたいしな」
「おー!勝って、打ち上げ行こうね!」
勝と照花も、気合十分のようだ。……そういえばだが、心南にバレてしまったことを、勝と照花に話していなかった。
俺はサッと、周りを確認する。まだ会場に向かう道中ということもあってか、周りに俺たち以外の人は見当たらなかった。
これならば、心南にバレてしまったことを話せるだろう。なるべく短くまとめて、になるが。
「……そういえば、まるちゃんのことが心南にバレた」
「「……え?」」
俺のその発言を聞いた勝と照花は、思わず足を止めてしまった。俺と美保も、それにあわせて足を止める。
「説明は、明日することになった。勝と照花には言っておこうと思って……」
「それは分かるんだけど、こんな急に言わなくても……。私もびっくりしちゃったよ」
「それは悪い。とにかく、そういうことだから」
俺の言葉に、美保も驚いていたようだ。俺はそんな美保に謝罪をしてから、そう言い終える。
「お、おう……。そうか、としか言えねえな……」
「そ、そうだね……。心南ちゃんにバレちゃったのは、ちょっとまずいけど……。話せば、分かってくれると思うよ?美保ちゃん」
「そうだと、いいな……」
照花がそう美保に語りかけると、美保は不安そうにそう呟いた。まずいも何も、心南なら分かってくれるとは思うんだが……。
美保の話なら、心南にバレたくないのは自分の過去ではなく、俺とまるちゃんとの家族関係なのだろう。それなら、何の問題もなく受け入れてくれるはずだ。
だが、美保に照花は、そこが不安らしい。なぜなのかは分からないが……。
「ま、まあ、今は組対抗リレーだ。それに集中しようぜ」
「う、うん!頑張らないとね!」
「そ、そうだね。まずは、リレーだもん」
「お、おう」
勝の言葉によって、俺たちは再び会場に向かって歩き出す。俺は歩きながら、今言ったことを少し後悔した。
これから組対抗リレーだというのに、不安にさせてしまった。これなら、組対抗リレーが終わった後で言った方が良かったのかもしれない。
だが、言ってしまった以上は、このままいくしかない。俺は少しの後悔を抱えたまま、3人と共に歩き続けた。
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