第45話


「こんな、感じかな……」


 美保が、勝と羽木に自分の過去を話し終えた。美保の話を聞いた勝と羽木は、それぞれ暗い反応を見せる。


 勝は驚きながらも歯を食いしばっていて、羽木はショックを受けたように顔を下に向けていた。それは、当然の反応だろう。


 美保の話はそれほどまでに、重い話なのだ。俺も一度聞いているので、よく分かる。


 美保を見ると、その手が震えていた。俺はその震える美保の右手に自分の手を添える。


「……大丈夫か?美保」


「……うん。ありがとう。信護君」


 俺がそう問うと、美保は微笑みながら答えてくれる。どうやら、問題ないようだ。


「その、悪いな。斎藤。軽く聞いていい話じゃなかった……」


「ご、ごめんね。美保ちゃん……」


 勝と羽木が、揃って美保に謝ってくる。思っていた以上の話だったからだろう。


「う、ううん!気にしないで!」


「「でも……」」


「大丈夫だから。それより、これで私たちからの話は終わり、かな?」


 美保はそう、俺に向かって言ってきた。その言葉に間違いはなかったので、俺は美保に向かって頷く。


「ああ。今度は、二人の話を聞かせてもらおうかな」


「……そうだな。次は、俺たちが話す番か」


「……うん。と言っても、そこまで説明することもないけどね」


 俺が勝と羽木にそう言うと、二人は頷いてくれた。そしてそのまま、話し始めてくれる。


「一言で済むんだけどな。実は俺と照花は、付き合ってるんだ」


「そういうことだよ!」


 ……まあ、そうだろうとは思っていた。だが、その詳細は全く知らない。俺と美保の、二人共だ。


 俺は勝と友達になって、美保は羽木と友達になってしばらくたつが、そんな話は聞いたことがなかった。一体いつから、付き合い始めたのだろうか。


「でも、一体いつから……」


「そうだ。俺ら、全く知らなかったんだが……」


「あー……。まあ、隠してたしな……」


「そうだね~……」


 美保と俺の質問に、勝と羽木が答えてくれる。だが、俺たちが知りたいのはその先だ。


 俺は勝と羽木から、何か話してくれるのを待つ。するとすぐに、話し始めてくれた。


「一応、俺と照花が付き合い始めたのは中学の時だな」


「は?け、結構前なんだな……」


 思っていた以上に前で、俺は驚いてしまう。美保も驚いたのか、羽木に確認をとった。


「ほ、ほんとに?照花ちゃん?」


「うん。正確には、中学3年生のときだね」


「こ、告白はどっちからなんだ……?」


 俺は羽木の答えに対して浮かんだ疑問を、羽木に聞いた。やはり、人の恋愛には興味がそそられる。


「照花からだよ。なあ?」


「うん。私からだよ~」


「そ、そうか……」


 羽木からと聞いても、何も思い当たる節がない。一体どういった経緯で、付き合うことになったのだろうか。


「照花ちゃんは、なんで柴田君を好きになったの?」


「あー……。その話、する?」


「ははっ。それを話されるのは、俺も恥ずかしいなぁ……」


 美保がそう聞くと、羽木が顔を赤らめながらそう言う。それに対して、勝も指で頬をかいた。


 俺も、その話はとても気になっている。じっくりと続きを、聞かせてもらうとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る