第18話
予約した席に辿り着いた俺たちは、それぞれの席に座っていく。席に着いた俺はポップコーンとドリンクを斎藤が座った席との間にセットした。
映像の方を見ると、これから公開予定の映画の宣伝が流れている。今流れているのは、ネット小説から書籍化、アニメ化して劇場版の制作が決まっていた作品だ。
俺もネットで連載されていたころから知っている作品なので、気になっている。原作にはなかった話だそうだから、尚更だ。
「……あ。このラノベ映画になるんだ」
「えっ?さ、斎藤。このアニメ、知ってるのか?」
斎藤が呟いた言葉に、俺は驚いてしまう。斎藤がラノベ原作のアニメを知っているとは思っていなかったからだ。
「うん。ネットで小説を読んだことがあって、そこから」
「へー……。そうなのか。意外だな」
「あはは……。自分でも、意外だとは思ってるけどね。でも、面白いし」
「確かに、面白いよな」
ネット小説でもすごい人気を誇った作品だし、コミカライズされた漫画も売れている。俺も好きな作品だ。
「じゃあ、また今度この映画一緒に見に来ないか?俺もこのアニメ好きなんだよ」
「そうなんだ。私も気になってたし、いいよ」
俺のした提案に、斎藤がのってくれる。まさか、見に行こうと思っていた映画が、斎藤も見たいとは。
先程から偶然が過ぎるが、斎藤と俺は好みが似ているのかもしれない。そう思うと少し嬉しくなる。
だが、中学から数えてもう5年も同じ学校に通っているのに、俺は斎藤のことをここまで知らなかったのか。仮にも妻だというのに。
俺は、これから斎藤を知っていこうと思う。まるちゃんの親をするには、俺は妻(仮)のことを知らなさすぎるからだ。
「……ねえ。さっきのアニメ映画、原作知ってないと分かんない?」
「え?まあ、そうだな。キャラ知ってないと分かんねえかも」
俺と斎藤の会話が一旦途切れた時、俺の右隣に座る高畑がそう尋ねてくる。映画からこの作品に入るのは厳しいのではと思った俺は、そう答えた。
「ふーん。そっか……」
「あ、高畑さん。前、このドラマ映画のこと話してたよね?」
俺が答えを返すと、高畑は俺から視線を逸らして自らの金髪をいじった。俺から見ると、何か考えているように見える。
そんな高畑に、桜蘭がそう話しかけた。そのドラマは、一度TVで放送されていた作品だったはずだ。俺はこの作品を見たことがないから、よく分からない。
桜蘭はこの作品を見ていたらしく、高畑と話せている。見た感じは刑事ドラマもののようだ。
その映像が終わると、徐々に暗くなっていく。どうやら、もうすぐ始まるようだ。
俺は自分の携帯が切れているのを確認してから、ポケットに戻す。そしてポップコーンへと手を伸ばした。
すると、斎藤の手と当たってしまった。急に当たってしまったので、驚いて手を引っ込めてしまう。
すると、完全に暗くなり、映画が始まる。そのおかげで、顔が少し赤くなったのは斎藤に見えていないはずだ。
だが、これからポップコーンを取るのに何度も手が当たってしまい、その度に照れてしまうのを今の俺は知らなかった。
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