第99話 特別な日

ナノマシーン研究機関本部病棟の一室



その時、丁度ウトナはエンリルの検診をしていた。



検診が終わりウトナが何かエンキに話しているのでエンリルが窓の外を見ると家から抜け出して来たのかそこに猫のエルヴィンがいた。



エルヴィンは窓をカリカリ引っ掻いている。



しかしこの窓は鍵が掛かっており中からも鍵を持っていないと開けることが出来ない。



エンリル「母さん。エルヴィンが来てくれたよ!」



エンキ「あら。。本当。どうしたのかしら?」



すると外が何か紫色に光り始めた。



次の瞬間、急に空が光ったかと思うと爆音が聞こえて建物がバリバリと揺れた。



驚いたエンキはエンリルを抱きしめる。



エンキ「今度はなに!?」



エンリル「怖いよ。。。」



外を見ると紫色の光に包まれているのが分かる。



しかしその光と爆音は一回では済まなかった。



まるで花火のフィナーレの様な数の爆音と光が紫の光の外側に響き続けた。



建物を含めエンリル達のいる直径数メートル以外は粉々に砕け散った。



その衝撃で窓の外にいたエルヴィンはあっけなく命を絶たれる。



エンリル「エルヴィン!!!母さん!エルヴィンが!!」



泣き叫ぶエンリルの声も聞こえない程に爆音が全てを包む。



建物が瓦解すると上から紫色の光が差し込んだ。



その光に気が付いてエンリルが上を見上げるとそこにはアヌの姿があった。



紫色の光の正体はアヌだった。



エンリル達の危機を察知してすんでの所で助けに入ったのだ。



エンリルの母、エンキとエンリル、ウトナ、そして死んでしまったエルヴィンがオーラの内側でそれでいてオーラに当たらない様にフワフワ浮いていた。



エンリルはエルヴィンの死体を抱きしめて叫ぶ。



エンリル「父さん!」



しかしエンリル達の防御にオーラを回した分アヌには相当のダメージがあった。



アヌはふり返る事もなくただ耐えていた。



息を切らしながら苦しそうな表情のアヌ。



空は何重ものキノコ雲と煙で覆われ夜かと思う程の暗さだ。



そこに真っ赤に燃えながらまっすぐ進む物体があった。



トドメに落ちてきたのは直径50メートル程の隕石だ。



宇宙からの隕石攻撃である。



雲を突き抜けて来たそれを見てウトナは覚悟を決める。



ウトナ:これ以上は持たないかも知れない。。



ウトナはとっさに持っていたナノマシーンを自分の腕に投与した。



次々と打ち込まれる核ミサイルで疲弊したアヌを秒速8キロの猛スピードで大気圏に突入した隕石が襲う。



避ける事が出来ないアヌはそれを受け止めた。



その瞬間大爆発が起こると衝撃は辺り一帯を吹き飛ばした。



既に一面の焼け野原だったそこに直径1キロ程のクレーターが出来る程の衝撃だ。



アヌのオーラもエンキとエンリルを守るので精一杯でついにはウトナも衝撃に巻き込まれる。



ウトナの肉体が消え去る最中、ふと見ると死んでいるエルヴィンと目が合った様な気がした。



何かに引き込まれるようにウトナはちりとなった。



そしてついにアヌの体も崩壊を始める。



想像を絶する衝撃だった。



それでもアヌは身を挺してエンキとエンリルだけは守り切った。



しかしアヌ自身そのオーラで人の姿を保ってはいたが既に肉体は消滅していた。



アヌ「エ、エンキ。。。エンリル。。。」



弱々しい声で二人に語りかける。



アヌ「どうか。。生きて。。」



そこに軍事衛星からのレーザー砲の光の雨がアヌに降り注ぐ。



分厚いキノコ雲を突き抜けてレーザーがアヌを焼く。



アヌ「うおおおおおおおおおおおお!!」



アヌは最後のチカラを振り絞ってオーラを衛生に向けて放った。



すると、どす黒い雲を丸く吹き飛ばしてその紫のオーラは宇宙に飛び去った。



そのオーラは軍事衛星を次々と破壊するとそのまま大気圏に広がっていった。



これによって衛生軌道上に大量のデブリが撒き散らされた。



そうして、この時より宇宙へ出ることも宇宙から戻ってくる事も不可能になり月基地や宇宙ステーションはこの時、完全に孤立してしまった。




空には沢山の流れ星がゆっくりと大気に降り注いでいた。



霞むようにボヤけて見えるアヌの姿。



僅かに残ったオーラはエンキとエンリルを放射能から守りながらゆっくりと消えようとしていた。



エンリル「父さん!!行かないで!!」



エンキはただ涙を流している。



そしてこの時、奇跡が起こっていた。



『特別』が始まったのだ。

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