第31話 バアル降臨

穴の底



光の柱が上がった直後、まだショウもアナトもティアマトとのリンクが残り、二人ともその身にオーラを宿していた。



ショウは反物質融合を起こす前にほぼ無意識のうちに様々なものを庇っていた。



地上での周辺へのガードもそうだがここでも水槽から開放された哀れな実験体達もその明るく緑色に輝くオーラに護られて皆九死に一生を得ていた。



そんなショウに少なからず共感を得ていたアナトだった。



その時、アナトは空に近づくチカラを感じてハッと上を見た。



成層圏まで貫いたであろうその風穴の彼方から煌(きら)めく星の一つが流れ落ちてきたかの様にオレンジ色の光が真っ直ぐこちらに向かって来る。



アナト「兄様!」



アナトが吸い込まれる様に見入っているとその光は間もなくアナト達のすぐ近くまで舞い降りて来た。



その男はアナトと良く似た黒髪に一点曇りもない美しい顔立ちをし、さらに白鳥のように美しい羽を持つ。



その姿はまるで天使のようだった。



アナトの兄、バアルである。



アナト「兄様!それ以上近ずいてはいけません!この者たちはみな、我々に染つり得る何らかの病原体を有しています!」



バアル「アナト、苦戦した様だな。大丈夫か?」



アナトの表情は明るくなりバアルを慕っているのが傍目にも明らかな程である。



アナト「はい!」



もじもじし始めるアナト。



アナト「。。兄様の胸に飛び込みたい。。でも、病原体が。。」



ショウ「もしもしー。声に出てますよー。」



アナト「あぁ、でも病気と闘う兄様を献身的に看病するのも悪くない。。」



ショウ「アナトさーん。あなた、そんなキャラクターでしたかー?」



アナト「そして徹夜で看病した次の朝、目を冷ました兄様は『アナト、お前ずっと。。』私は兄様の手をとり。。」



ショウ「おーい、帰ってこーい?」(汗)



アナトはハッとして周りを見渡す。



アナト「コホン!」



取り繕うアナト



アナト「こ、この方が兄のバアルだ。」



ショウ「あ、ハイ。。」



バアル「君が他守ショウか。。妹が迷惑をかけなかったかい?」



アナト「兄様っ!」



ショウ「いえ、本当に何もかもが突然で。。アナトがいてくれてとても心強かったです。」



バアル「そうか。それは良かった。」



バアル「それにしても君は凄いね。チカラの放出がケタ違いだ。」



ショウ「いや、これは殆どマグレというか。。魔法が使えなくて仕方なく。。」



バアル「魔法。。?」



アナト「兄様、恐らくそれはチカラの具現化に際してあの『ゲーム』のイメージを利用しているんだと思います。魔法とはこう言うものだという刷り込みに対して他守のチカラが実現させたものかと」



ショウ「でも、熱が出た時に急に使えなくなったんだ。」



アナト「その辺り、お前も何かチカラの使い方に対して完璧ではないのだろう。その『ゲーム』にチカラの制御を依存していると言うことか。」



アナト「今は魔法は使えるのか?」



ショウ「えっと。。。お!コントロールパネルが反応する!使えそうだ!」



ショウはそう言うと次々と防御系の魔法を自らにかけた。



ショウ「物理攻撃無効!プロテクト!マジックウォール!」



色とりどりの魔法陣が現れてショウの周りで防御をはった。



バアル「ほぉ!これは凄いね!」



バアル「でも敵はそれを君に与える技術がある様に抑える技術も持っている。という事だね。」



バアル「他守君、君はその魔法と言うチカラを本当に君の物にする為にまず、君自身のチカラをちゃんと制御する術を知った方がいい。」



ショウ「え?。。でもどうやって?」



バアル「アナトに教えさせるよ。君も嫌ではないだろう?」



ショウ「え!?アナトに?え?」



アナト「なんだ?不服なのか?」



ショウ「いや!そんなことは!」



そこに今まで会話に入れなかったミネルバ(ショウの呼び出したフェイスと呼ばれる召喚士のNPC)がようやく割って入る。



ミネルバ「tamori!上から何か来ますわ!」



ロープ伝いで上から降りてきたエアバニーと『D』達である。




アナト「お前は。。」

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