第116話 アルフォードの隠し事 (マルク視点)
……セインとソシリアが去った後、部屋の中を支配したのは、居心地の悪い沈黙だった。
そんな中、アルフォードは仕切り直すように告げる。
「……ソシリアには謝りにいかないとな」
「アルフォードのせいじゃないわ」
「リーリアありがとう。だが、これは間違いなく俺のせいだ。……こうなる前に言っておくべきだった」
そういいながら、アルフォードは覚悟を決めたように表情を真剣なものとする。
「だから、まずはなんとしてもサーシャリアが安心できるように、伯爵家は潰す。前に言ったように……」
「……まてよ、アルフォード」
俺が耐え切れず声をあげたのは、そのときだった。
「何だ、マルク?」
「……まだ、全部話していないだろうが」
俺がそういうと、アルフォードは沈黙する。
それは一見、困惑しているようにも感じる沈黙だったが、アルフォードが誤魔化そうとしていることに俺は気付いていた。
しかし、それを許すつもりは俺にはなかった。
「確かに、サーシャリアが追いつめられていたことについてはわかった。だが、お前はまだ言ってないことがあるだろう?」
「……何の話だ?」
「お前が、全て自分の独断という形に持って行こうとした理由についてだよ」
そう俺が睨むと、アルフォードが一瞬押し黙る。
しかし、代わりにリーリアが口を開く。
「マルク、それは多分ソシリアや、私達ににいえなかったからよ。それでもサーシャリアを守るために、独断という形……」
「違うぞリーリア。アルフォードがそんなかわいい理由で暴走するわけないだろうが」
「……根拠はあるのか?」
そう問いかけてきたアルフォードに、俺は笑って告げる。
「決まっているだろうが──勘だよ」
その言葉に視界の端、リーリアが脱力するのが分かる。
しかし、射抜くような俺の視線に対し、アルフォードは困ったように笑った。
「……本当に、時々マルクの勘は異常に鋭いな」
「え?」
「そうだ。俺は確かに、意図的に独断を装った」
困惑を隠せないリーリアと俺を見ながら、アルフォードはそう認めた。
「……サーシャリアのためか」
「本当に、こういう時のマルクには隠し事ができないな」
そう苦笑して、アルフォードは告げた。
「ああ。俺が独断を装ったのは、サーシャリアのためだ」
……その顔には、悩んできたことを示すような、苦渋が浮かんでいた。
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