7月31日


 夕暮れ。

 昨日も訪れた河川敷の土手。腰をかけながら川を眺めている。

 生まれて初めてのカノジョと、二人で、並んで。



「……今日で、付き合ってから三十一日目ね」


「……そうだね」


「恋人という関係も、今日でおしまい……、明日から、私たちはただのクラスメートよ」


「……そうだね」


「……楽しかったわ、とても。……短い間だったけど、本当に、ありがとう」


「……僕の、方こそ」


「……あなたのこと、忘れないわ」


「……いや、僕死ぬワケじゃないから……」


「……」


「……」


「……」


「……ねぇ」


「……何かしら?」


「理由……」


「……えっ?」


「理由……、教えてよ、なんで三十一日間限定だったのか。付き合ってから三十一日後に教えるって、約束だったじゃん」


「ああ……」


「……」


「……そうね、言わなきゃ、ダメよね……」


「……できれば……、いや、かなり強い意思で、教えて欲しいな」


「……」


「……」


「――保険をかけたの」


「――えっ……?」


「……期間限定にすれば、『三十一日間だけ』って条件をつければ……、その期間は、絶対にあなたの恋人でいられると思ったから……」


「……」


「……私みたいな変な女、三日でイヤになって、やっぱ別れようって……、そうなってしまうのが怖くて。だから、『保険』――」


「……変っていう自覚、あったんだ」


「情けない理由で、ごめんなさい……」


「……」


「……じゃあ、私そろそろ行くわ。本当に、今までありがとう……、二学期になってからまた会いましょう、同じ、クラスメートとして――」


「うん……」


「……」


「……待って、最後に、僕からも一ついいかな?」


「…………何?」



「僕たち、付き合わない? 三十一日間限定で」







-fin-






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短編】三十一日間のカノジョ 音乃色助 @nakamuraya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ