【短編】三十一日間のカノジョ

音乃色助

7月1日


 学校の校舎裏。

 クラスメートの女子に呼び出された。

 何の用だろうか。



「ねぇ、私と付き合わない?」


「えっ?」


「三十一日間限定で」


「……えっ?」


「……ダメかしら?」


「……いや、なんで期間限定なの?」


「それは……」


「……」


「……それは、三十一日後に教えるわ」


「えっ」


「いいから、私は返事だけを聞きたいの、イエス? ノー? それとも……」


「……それとも?」


「……いえ、よく考えたら他の選択肢なんてなかったわね」


「……キミって、もしかしてバカなの?」


「……それは、イエスと捉えていいのかしら?」


「やっぱりバカなの?」


「……照れるわ」


「会話のキャッチボールって、知ってる?」


「あら、野球のルールくらい知ってるわ。手を使ったらハンドといって、反則になるのでしょう?」


「なにから突っ込めばいいか混乱してきたから、一回深呼吸させて」


「えっ!? 人口呼吸!?」


「うん、ちょっと黙って」





「ちょっと黙ったわ」


「ありがとう」


「窒息するかと思ったわ」


「息は止めなくてよかったんだけどね」


「なんだか苦しい……、これが恋というものなのかしら」


「脳に酸素がいってないだけじゃないかな」


「何を言っているのか、ちょっとよくわからないわ」


「僕は、キミが何を言っているのか、ずっとわからないけどね」


「心外ね……。私が言いたいことは、私と付き合わない? って、それだけよ」


「いいよ」


「えっ」


「付き合おうよ、三十一日間限定で」


「……本当に、いいの?」


「キミから言い出したんじゃん」


「そう、だけど……」


「これから、よろしくね」


「うん……」


「……」


「……あのっ」


「……何かな?」


「質問が、あるのだけれど」


「……質問?」


「あの……」


「……」



「付き合うって、具体的に、何をどうしたらいいのかしら?」


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