38-お帰り

「ふう」

シュルトの説得に応じたと思われる2人に見られながら、セリは帰りの準備をしている。


現在、睨まれている。

もちろん居心地が良くはない。


ロードとカナンが、教会を去った貴族が変な物を仕込まれていなかの見回り。隣室にグスタフとシュルト、キースがいる。



スッと立ち上がった兄の行く手を、セリは阻んだ。


「親父を助けに行く。」

「妹を置いて?」


その妹は、兄の服を強く掴んだ。


「お前に何がわかる!強いのに囲まれて守られてるくせにっ。皆んなを助ける!」

「武器も人もなく、無謀な事してようとしているのはわかる。」


「お前ら強いのにっ何もしてくれないからだろっ」

「何もできなかったから、ここにいるんじゃないの?」


セリは相手の怒りの目を見ても冷静だ。挑発めいた事を言った自覚はあるけど、できる事とできない事がある。間違えれば、死ぬ環境に居た説得力はあったようだ。


「くそっ…くそ…」


悔しさで大人しくなったので、隣の部屋に行ったたシュルトが軽食を用意していた。


「あの子達、どうカシラ?」

「言い負かした。」


「ソウ。ご苦労様。」


少し当たられるくらいは問題ないけど、あの2人を保護しないと話が進まない。


“ここは撤退すべき”


キースが判断したのなら、従う。大局を見ている故に中途半端に救出すれば、他に捕まっている者がいた場合…消される。証拠とともに。


「救い出せる算段をつけなければ、尻尾切りで闇に葬られるんだろうね?」


貴族の対応は、間違えると怖いと聞いているが。キースより怖いとは思わないセリだった。


シュルトと話していると、ロードが帰ってきたので、運命神のシスター達にこっそり会いに行った。お土産に肉を持って世間話をする。


「ポーションも十分ですし、お肉は大歓迎です。」

「獣人の子が保護されるのは、しばらくなかったですね。」


「貴族の家からと言われると教会の中でも、判断が分かれています。」


孤児院でも、獣人の子が行き着く。迷子であったり逃げてきたり。ここ数年は居なかったな。


「状況をうちの教会に連絡お願いできますか?」


運命神の教義的に保護はするが、対抗できる力があるかは微妙だ。情報を共有して乗り切る体制は好ましい。育った場所で、恩義は感じているので協力は惜しまないつもりだ。


「ええ、承ります。」


旅に祝福をと祈られ、そろそろ帰る時だがキースが足止めされてる。


教会の関係者が引き止めるが、日があるうちに動きたい。結果、

ロードの威圧で、散っていった。



教会を出て、丘の上。

参拝する者もいるが、この寒さと日が暮れる時間にはいない。


準備した魔石を配置し、転移魔法の発動がなされた。

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