11-乱打

「ドーシタノ?」


シュルトが部屋で迎えた2人と1匹。

妙に浮かれる狼と、苛つくロード。セリはあっけらかんとしている。


その様子から危険性はないが、拗らせると面倒な事になると察した。

今日の出来事をセリから聞き、状況を把握する。


「兵士のやる事は、まあ上の方に頼むとして…。」

「ワフッ」

相槌を打つ狼をポンポンと軽く叩きながら考える

(ロードの機嫌とりネ。)

そこはセリに頼むのが一番とそちらを見ると…


「鱗じゃダメか?」

「モフモフが良いかな」


会話は成り立っている。その様子にヨソヨソしさは消えて仲間内の気楽さは見えるが、親密度は狼のが高いように思う。


視界の縁で、自慢げな狼をジトリと見といた。


「犬が好きなの?」

抗議の声を発した狼は脇に置いて、セリに直接聞く。


「狩りができる子が羨ましくて。追い立てての狩りがカコイイ!」

実際にその様子を見た時があるのだろう。雪の地域で、ソリを引く犬が居るのを聞いたことがある。狩りにも参加するのか。知らなかったワ。


活き活きとした瞳のセリの、頭を撫でた。

ナルホド。可愛いより、“頼りになる”が良いのか。


(なら、毛並みがなくてもアピールの仕方次第ヨネ?)


視線でロードに許可を出し、後は2人で。

セリも元気なようだし、部屋で遊んでいるでショ。行き過ぎそうなら止めようと簡易のキッチンへ向かう。


料理の下拵えに、補給。

狼は窓際で寝る事にしたらしく、(毛皮を敷いたみたいネ。)



ロードとの時間も長く、距離感にも慣れてきた。慣れて良いのか疑問の膝の上だが。


「セリは毛皮以外に、何が好きだ?」


その触れ方に、問う瞳に好かれたいという気持ちがのっているのを知っている。セリは正直に答えた。


「一緒にいてくれるのが良い」


独りだった。魔法を使い、肉を求めて。寂しさと孤独感はまだ感触が消えない。


ぎゅううっとロードがセリを抱き“締められる”のが見え、止めるか迷うシュルト。

ロードは、ほどほどで締めを緩めた。


「マッサージとか?」


狼は寝たフリをした。全身をモフモフされるのは回避だ。

優越感だったりするが、ちょっと疲れた。のんびり手足を伸ばし昼寝と洒落込む。


(寝てればちょっかいかけられないのは、嬉しいねえ。)

子供というのは、耳を引っ張るわ尻尾を掴むわで近づきたくないが。


セリちゃんくらいなら問題ないね。

狼姿だと邪険にされる事も多いし。オレ何言ってるかわかるんだけど?


お茶の香りがする。魔導具を使いシュルトが淹れているのだろう。

そう確かめ居心地の良い部屋で、のんびり寝にかかった。




ところ変わって、地下訓練場は違う様子だった。


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