9-尻尾ふりふり

「講義に参加するか?」

グスタフの問いに頷こうとしたセリだが、ロードは渋い顔だ。


「あんまり部屋に篭ってると、嫌になっちゃうわヨ〜。」

シュルトの言葉に、眉間の皺を深める。


「行きたいな。」

セリのひと言で承諾した。3日後の予定が決まった。


シュルトの今日の仕事の話をして、北の砦から持って帰った物の話になり

セリがひとつ気になっていた物を思い出した。

「地図を実際に見てみたい。」


海側、ドワーフの居住区の先にあった資料も運ばれている。


「キースに許可をとったほうが早いな。」


グスタフはじっくり見たらしい。その地図は極北の城にいるドワーフが読み解き、情報の共有がされた頃だ。隠す情報ではない、ほとんどが森という地図で軍事的にも使えるものではない。


買い物へ出る場所の情報が書き込まれている。

村、川で商売する舟と会う地点。


酒を購入する場所だったりする。しかし、正確な地図だ。そこは疑わないのはドワーフの仕事だから。詳細で精緻なこだわり抜く性質。


「夕食の時に頼んでみる」


今日も、キースは部屋で会う。当然のように、6人で食事をするようになっていた。


いや、1人は狼になっている。他の場所での食事はしずらいのかとも思う。食べやすいようにしているシュルトは慣れているようだが。


そろそろ帰ろうとロードの言葉で、セリは歩いてグスタフの部屋を出た。

外から、狼が寄って来た。


「お帰り」

「ワフッ」


ご機嫌のようだが、雪がついている。

「ブラッシング、だね?」

セリの念願の時がきたようだ。


“え?”と止まる狼。それでも部屋には来た。


風呂に入れた。


シュルトの協力で、大きなブラシに毛並みを整える液を手に。

念願のお手入れタイム


濡れた毛並みに、指を通す。お湯をかけ、マッサージしながら煌めく。

拭いてから、最後の仕上げ。


“ぐったり”な狼は抵抗しない。


ロードも影で手伝った。


“オラ”

“あっち行け”


狼を風呂へ、無言で指示だけ出した。


楽しそうなセリに付き合うのは当たり前だが、狼の手入れなど興味ない。


そのうち、シュルトが温風で乾かす。嫌がり出したので冷たい風にすると毛並みは艶やかに乾いた。


「できたぁ、もふもふ!」

「お疲れ様。」


セリに言ったが、カナンも労おうと思う。やりたい放題されたのは男としては同情する。


ロードに容赦なく追いやられたものだから。

まあ、セリのためだものね。けど女の子にされるには忍耐がいったかも。


たぶん、悶えている。


「散々だったな?」


俺がやられたい。という気持ちを滲ませ、セリにどうしたらやってもらえるか考えようと思考するロードだった。

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