7-ごろ寝

結局、セリからは何をするでもなく狼とごろごろして数日を過ごした。

他のメンバーはいそがしい。


脅威は排除された訳ではなく、凍結させた。それは変化があれば直ぐの対応が必要で、問題の先送りでもある。


それでも時間があるだけ、充分な成果だ。その時間で解決策を探れるのだから。


それに関わったが、書類処理などには戦力外の2人。セリが話しかけていた。

「教会にはまあ、魔導具がいるかっていうと、要らない?」

「くぅーん」


「やっぱ孤児院の方だね。暖房具かなあ。隙間風があるたびに何かで防ぐ、また見つけるってくらいだし。」


「ふぐっ」


「もふもふしてると良いよねえ」

「ふんふんっ」


(聞いてないな、これ。)


狼をぐりぐりして、よっと乗っかる。嫌がっていない、怒らない様子なので構わず、もふもふした。


作業をするロードはその様子も、セリの独り言になってしまう声も聞いている。作業も止めていない器用な事をしていた。


褒賞金のかわりに、魔道具を望んだセリだが。

(遠征道具と考えた方が良いかもな。)


高価な魔導具も可能だ。しかしそれでは整備できないと使い続けられないものも多い。


“複雑さと安全面で”だ。


ちょっとした兵器にもなる火力、その扱いの面倒さから魔石で動くような魔道具の方が使い勝手が良いだろう。


そんな事を考えながら、書類に目を通す。


人選


セリに近づけたく無い輩。


態度の悪さや、威圧を送る視線。感情を乗せてくるのを察知するのは容易い。


そんな様子が見れたのと分けていた。

緊急必要だが


(セリとの時間が減る!)

ここ数日で、終わりが見えて来たものの飽きてきた。


(いや安全のためだ。)

書類に戻る。


衛生士は問題なさそうだ。グスタフのレシピ。作ったのを手伝ったセリの話も聞きたいと要請が出ている。


グスタフからも誘いはあった。

参加人数も絞るらしく、以前に講義の参加もあった。


敵意を露わにしている兵士、煙たがっている騎士よりは抵抗はない。そろそろ、セリの忍耐も限界かもしれない。


「暇あぁああ」


毛皮に埋もれ、声を出している。医師とキースの診断を受けてからなら、少し出掛ける方が良いか。


そんな考えをまとめ、声をかけた。

「おやつにするか。」


番が喜ぶ姿は何物にも変え難いが、身体に障らないかだけが心配だ。


「おやつ〜、一緒のやつ食べられる?」

「ウォン!」


臭いや刺激物以外は、今まで食べられている。


「犬でも食える」

「ガァウ!」


犬じゃない!と抗議があがるが、美味しそうなクッキーに尻尾を振っていた姿では説得力が無かった。

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