35-計画中
拠点の空気は弛んでいた。魔物の群れを退けられ今は、通常の状態に戻っている。食事をとり、交代で仮眠して補給の確認をしていた。
そのひと段落した空気も、危機が見えないだけであるのだが今はいい。急いでも事をし損じるというものだ。
土と氷でできた城壁のように聳え立っている。兵士達は配置の変更で壁に沿った見張りが置かれ、南、西の調査を定期的に行われる事になった。
対処できる規模だ。ただ、同じ規模だと決まっていない。凶暴化している分、厄介であるし毒持ちなど特殊な個体が出れば崩れる事も考えられた。
「逃げるなら、北の砦だね?」
地図を見ながら、魔物の発見報告に照らし合わせ
複数の群れがなだれ込んでこれば、対処ができないとわかった。
兵士達は時間をかけ団体であれば勝てるが、その分回り込まれればやられる。
「ブラッドベアーが3体くらい別方向からきたら、守れるかな?」
総力戦でなら可能だが、他の魔物の侵入を許す事になる。壁は西にしかない。突破されればこの拠点を守れるものはなく、物資も足りない。
極北の城まで戻れれば良いけど、遠い。
団体で動くには距離があり、その間に襲われれば散り散りになる。撤退先としては悪手だ。
「ドワーフの居住区から、海に出れたとして船?」
「繋がっている川を上って戻れる可能性が高い。その道順を確保している可能性が高いな。」
「買い物用に?」
生活していた、物資の供給があった。酒。『良い仕事のために、良い酒』
の言葉のままにドワーフは呑む。それでも食糧は物資交換などで得た方が良かっただろう。
「失礼します」
騎士が、盆にのせた魔石を運び込む。グスタフが魔物の調査結果を告げた。
「体内の変化はなかった。魔石にも目視で異常はない。」
キースが魔力を通して、視るが確かにおかしな感じはしない。
「なぜ異常な行動を取ったんだろう?」
「魔木の可能性が高いな。」
「興奮状態?」
群れでの錯乱した様子。同士討ちはなし。しかし、ブラッディベアが合流したのはなぜなのか。
結論からダンジョンの出現より、魔木の可能性が高いのでそちらを想定して動く事になる。
「魔木ってどう封印するものなの?」
「エルフが得意な樹木魔法が有効だな。」
「そーなれば薬術師とかも必要かあ。」
人材も物も足りない。できれば、封じておきたい。
炎で燃やし尽くすのは、全容を調査できないため、漏れがあると困る。
「灰から復活するなんていう言葉もあるからね?」
根絶させるには、いくつかの手順と観測が必要だと伝えられている。
そのままにはできないし。
「今の人材でできる封印って何がある?」
「魔木自体に何かするより、魔物を避けるのが有用だ。魔力を放つ木である。」
「その方法だよねー。」
魔力を通さない布で覆う
魔物除けの香を焚く
ぱっと思いついた方法だけど、充分かどうか。
「やれる全てをやっておくのが有効だ。」
「そうだね。封じ込めの魔法と魔物除けの設置。後は…土壁で覆ってみる?」
「土より氷のが隙間なく覆えるかもしれない。」
「じゃ、ロードがいるね。セリをどうするか。近くまで来てもらう?」
「セリか。」
子供がついていくのに、不安を感じるのはしょうがないけど?
「水魔法が使えたな?」
何か良い作戦が浮かんだ顔に、ニッコリとした笑みを浮かべた自覚はあった。
グスタフが調合をしたいの言い出したので、材料の手配をするならシュルトが良いけど。
「昼ごろまで寝てるかな?」
緊張、緊迫が続くのも良くない。しかし、作戦は可及的速やかに行わなければ。逃げるのみになってしまう。
「手持ちを確認してから、声をかける。」
少々早めに起こされるが、商人として役立ってくれるだろう。
その同じ建物、違う部屋では。
スヤスヤと寝てるセリ。それを見つめるロードがいた。
この危険のある地に、連れてきて良かったと思うが。
(自分の側が安全だ。セリには負担だろうか?)
愛しい番を危険に晒したくはない。怖がらせたくないが側にいて欲しいと思うのは自身の望みだ。
どう思っているかなど聞いてみるしかない。
番の安定した寝息を眺めたのだった。
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