29-足の下
もう一回、水球を創って下に落としてみよう。
「どうした?」
ロードが問いかけるが、セリは
「水を染み込ませている」と簡潔過ぎる答えを言う。
「何かわかる?」
カナンが察し、覗き見てもすぐ乾いたような地面があるだけだ。
「空洞がある?」
操っている水球が、ある程度下に落ちると浮いて土がない感覚になる。
「穴でも空いてる?」
「そう、多分この水球より大きい。」
すぐに創られた水球は、セリの手に乗るくらいだ。
「小さければ、土が触れる感覚がある筈。」
それで探知する方法というのを聞いたことがあった。この土地では雪があるので使いにくい環境だ。
落ちた空間で浮かせるのに魔力を使い、水が霧散する感覚を味わった。そこで消えて、他がどうなっているかはわからない。
「変ね?ドワーフの仕事なら踏み固めた土に空洞なんて作らないと思うケド」
年月が経っていても、凹むような均し方はしないと思われる。
「魔物のせいかもよ?穴開けるやつとか。」
「鼠型ならありそう。」
セリがこの坑道で見かけたことがあるのは、小型の魔物で。爪があったようだから、土に潜るかもしれない。
そんな結論になり、どれくらいの穴で陥没の原因にならないか調べようと試みる。
危ないようだったら、グスタフに土魔法を使って補強してもらう。
セリが作る程度の水が入ったところで崩壊するほどの危機的な状況はないだろう。
セリが集中して魔法を行使するのを見守る形になった。
奇しくも、
グスタフ並みに変な行動だが、年齢差分みれば可愛い行動かもしれないと思いながら眺めていた保護者達。
護衛達は、動きがない方が守りやすいので歓迎だ。危ないことはしていないし。
まだ、しばらくグスタフが動かない様子だったし丁度良い。
徐々に、中央にあたる位置まで移動している。氷魔法を加えての方法を思いつき、ロードも参加だ。
水球に魔力を注いでもらい、
下に到達したところで、発動!
中心から爆発するように凍らせ、氷の塊がどれほど広がったか調べる。
感覚勝負だが、空洞の大きさが分かりそう。
セリの感覚で深さは、グスタフの身長くらいだろうか。どれくらいで到達するかで判断した。
水球への魔力を入れる練習を何度かロードと練習した。
魔力を連続で使ったので、保護者2人から休憩を言い渡され、休憩にと呼ばれたグスタフが来た。
「奥へは入らず、もう少し調べたら戻ろう。」
目に見えているどの穴にも入らない選択に頷く。
何をやっていたか話すと、魔力を注ぐ量を計算してくれた。
使ったことのある片手鍋に入るくらいに水の量。
「それを水球にして…」
魔力で包む感じ。イメージは卵の殻。
中身を守るように、動いても魔力が抜けてしまわないように。
じっくり慎重に魔力を操る。
動きは下へだけなので、浮かせて移動する必要はない。
ロードの感覚共有を待ち…
足下の地面へ落とす。
下へじんわり染み込むように。外側が薄すぎて失敗した。
もう一回。
「今!」
ぱきいぃん!と
破裂した感覚を感じた。
多分成功。どれくらい広いか?
「落ちた。」
“あの水球より大きく、もっと下がある。”
と言う結論に、この地面が不安になった。足下から崩れる可能性が頭を掠める。
「この下に空間が広がってるんじゃない?」
「そんな事あるのだろうか。」
護衛はその点が気になるらしい。
ただ、穴はあるのは事実。
「フム。この地下か。」
「この坑道がそもそも地下空間だけどな?」
グスタフの呟きに、カナンが突っ込んだ。いきなり陥没という弱さはないと土魔法で確認してくれたようだ。
「ここには、搬入口がない。」
「素材の運び出し用の?」
「北の砦か?」
「下にあるのカシラ」
「上より考えられる。」
シュルトが聞き役に変わり、出したグスタフの結論。
『重い金属、酒に搬入経路があるとして運び出すのが大変なら、その方法を準備している。』
トロッコ
昇降機
その可能性を考え、この下へ行く道を探すのだった。
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