26-直進

ずっと、坑道、景色が変わらないと…正直飽きる!

ので、セリはロードに話かけていた。


「あそこに小さな魔物を見たことがある。」「鼠型で、すぐ逃げた。」他に魔物は見たことがない。」


その声は響く程ではないが、護衛としては止めるべきか?魔物の気配が感じられないため、そのままにしてあった。


セリが入った事がある地点はすぐ過ぎたものの、かわり映えする光景はなかった。北の砦にとってこの場所は“荷物置き場”でしかない。


『真っ直ぐの土壁、横穴が掘られただけ。』


“この先にもめぼしいものはなく、出口にもならない。”

と調査結果が出ていた。


かつて通じていたかもしれない道も土に埋れれば使えず、捨てたられた穴蔵。放置され、人も寄り付かないかったのは隠れる場所もなく、追い詰められるからか、閉塞感があるためか使われていない。


置いてあった荷物も全てがなくなっているが、セリが何が置かれていたか口にしながら進むとやっと…「ここら辺。」


奥に、拓けたところがあった。

“複数の穴”

真っ直ぐ前。その左右に少し離れた位置。そして上、2階部分のように3つが見えた。


入ったことがないが、聞いたことはある。

“危険、戻れなくなる”と噂されたのは、ただのふざけた話だったのか。

何かがあったのかさえ、分からない。


『立ち入りを禁ず』がこの場所だった。



「少し、魔法が削がれているか。」

グスタフが視たところ、耐久の魔法がかかっているらしい。弱まってもいるようだ。


「へえ。デカイものも置けそー」

「ソウ?入れるのも出すのも大変じゃナイ?」


カナンとシュルトも軽い調子で、周囲を見ている。『広くても、不便。』のひと言に尽きるらしい。


「風は感じないな」

「どこも、土の壁で終わってるらしいよ。」


ロードの呟きに、セリが答えた。北の砦にあった情報もその通りに記してある。土の色に混じるように、ドワーフが刻んだと思われる模様が下の方にあった。


文字というより。少しの飾り気と感じる程度にさりげなく。セリが見たものと系統は同じようだが、全く同じではないと思う。


「変化がないかの確認だ。記録のないところには入らない。」

グスタフの方針に頷き、少し休憩を入れる。


まず入り口の様子から。

「どこに入るかは、やはり直進か?」


ドワーフの仕事は丁寧で、長く維持できるものの。手入れがなければ、危険。細々とした修繕や点検があってこその安全だ。


「メインは、真っ直ぐだろうな。」

徐に話すグスタフに、シュルトが疑問を呈する。


「耐久性からいってナゼ、複数掘ったの?」

「採掘のためだろう。強度的に、穴を繋げるにはやめたらしい。」


「この奥の海風を塞ぎたかったとか。」


カナンも加えた。確かに向こう側は海。地図でいえば。

危険で、「船があれば別?」



「セリちゃんは船は乗ったことある?」

「小舟なら」

川に浮くような小さい舟。


「海は?」


「見てない。絵でならある。」

行ったことがある者から話も聞いた。


「魚、川とは違った味で美味いよー。」

「魔物も多いのヨ」


「凍らせれば、持って帰れるんじゃないか?」


カナンの提案にシュルトも頷くが、どうやって運ぶのだろうか。思いついたとカナンが言うのは…


「キースに魔法で送らせるとか」

「やってくれるかな?」


セリはめんどうと言うキースを想像した。


「よっぽど珍しい魔物なら、協力してくれるワヨ。」

それは、経験済みの言葉らしい。加えて…


「ブラッディベアの大きいのを運んでいた。」


グスタフの言葉に、“結構気軽にやってくれるのかもしれない”と思った。


“よくよく考えると、お偉いさんに頼むことじゃない。”


と思っても言えない護衛達。

どれくらいなら、いや種類で興味が違うんじゃないかと話し合う

商人と冒険者志望の話に、具体的に考えているロードがいたのだった。


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