21-人族の跡

「セリちゃんナイス!」

頭を撫でるのは、仮眠から起きてきたカナン。



あの騒ぎで起きたというが、うるさい物でもなかった。

寒い魔力で起きたのだったが、セリには及ばない範囲なので実感はない。



「子供だからって邪魔扱いする。」

不貞腐れるしかない。


騎士に入る立場らしいが、敵意も感じた。


「ああいうのは、小さい。」


何が?とも口に出せず、セリを見るのは保護者3人。


「きもったま?」

“良かった。答えが健全だ。”


と思ったカナンとシュルト。


聞いていたキースとグスタフは、“まあそうか”と納得した。

ロードは、あんな奴らの話題など不要とばかりに即、話を変えた。


「今日の予定はどうする?」


セリに決定権があるような台詞だ。


勝手に出歩いて良いのか?

セリはキースの方を向いた。ここでの権限が一番あるからだ。


「いいよ?グスタフと中に行って来たら。」


中、というと坑道かと思ったが、砦を探索するらしい。

この拠点が攻められる事があれば、北の砦へと篭城となる。


地の利的に使える戦術だが、調査が必要だの事。


「ひと通り巡る」

グスタフについて行く事になれば、カナンもついていくのが決定だった。

キースはこの建物から動かないし、シュルトもだと思ったが…


いた。


「すぐに動けなくなるし?」



食事をするメンバーで、散歩にしては妙な場所。建物内は、外並みに寒い。穴、崩れ石造りが寒さを伝えてくる。


装備のおかげで、冷えはしなかった。良い装備を着せてもらっているので感謝している。


ロードと手を繋いでいるのはなぜか?当然のようにこのスタイルで行くらしい。

両手をあけておいたほうが良くないか聞いたら、その時は背負われる。

決定だった。


「穴が4階部分で、1、2階が兵士用。3階が貴族が占領。」


キースの言う通り、概ねそんなところだ。

セリは頷く。


「1階と4階かな?」


2階と3階は、タローとクエンが来たら別動隊で行く。


隠し部屋や、物を探す目的らしい。罠もついている可能性があるので、今回は手を出さない。


どんな感じか見る


もう一つ、“セリを拠点に長く置かないほうが良いかも”という思惑。


今いる部隊長達は大半がダメ。


“贅肉”かなあ。面倒だ。


護衛の3人をセリにつけるとして、カナンを動かす。

護衛はロードで十分だけど、面倒ごとは自浄作用が働いてもらわないとね?


“情報提供者だ。保護しているセリを威圧するべきではない。”


って回しても反発だ。



物も、火にくべって使ったのでガランとしている。小物だけが、転がっていて、人族が住んでいたと知らせていた。


「この穴?」


石壁から、土に変わる。両開きの扉が作れそうな穴。


板で隠せそうな、突き当たりの壁。

そこに続いている土の道は、天井が低めだが明るさがあった。


「どこで明かりが?」

「土に、魔石の粉のように含まれている、か。」


魔力を持つものか、生き物が出入りすれば


「ダンジョンとかみたいに?」

「そうだ。」


専門的な話をしながら穴を見て感慨もなく、さらっと見て終わった。


帰れば、ちょっと早い昼か。

セリはシュルトと食事の用意をして、朝食と同じメンバーが揃う。


明かり、生活魔法の話から妙な話になった。


「エセ魔法かな。」


通称だ。詐欺として使われる。


「見せ物でも使っているけど、商売人の格好でやる奴もいるから注意」


手癖が悪い話だ。キースには縁がなさそうな話を知っているセリは、冒険者になるつもりだった。そういう知識は身を守ると教えてもらっていた。


「見せ物ってのは?」

「火の色を変えたり、形を…こう。」


球体の火にひょこっと頭が出たように見える。


「ひよこ?」

「鳥。」


飛べない鳥が炎で作る。もっと精巧にできるらしい。

「ファイアーボールに形を変えるわけか。」


「ちょとやってみようかな?」

仕事から逃げたいのか、キースが外に出た。


創られた炎の鳥は、人を乗せられそうな大きさの鳥。羽根まで見えそうな繊細さだった。


「持続と、動きが課題かな?」


火力も凄い。

「消火する?」


「いいや、飛ばすよ。」

明るい空の下北の砦に飛んでいった。


砦の方へ。

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