番外 その頃の
「なぜ!許可したのだっ」
何度も繰り返しているが、それほど悔しかったのか。その思考も予想通りに動いている男が滑稽だ。
「彼の方の要望を受け入れたまでだ。」
『静かに出る、見送り不要』のお言葉を従ったという建前を有効に使う。
「それでも!その高貴な方へ数人の兵をにつけただけで送り出しただと?
我々の行動に疑問を持たれては…」
“出世に響く”とでも言いたいのか。
前も外にお忍びで出るとおっしゃった貴人のに、盛大に送り出した男は、今回動きを封じられた。
逆効果だと言うのに、まだ媚へつらう気だった。
察しない愚鈍さ、相手は煙たがっているというのに。
まあ王家に連なる方が来て、浮き足立つ気持ちというのもあるのだろう。
いや、騎士である私にはわからん。膝をるつく相手であって、煩わせるとは。
「あんな竜人と、子供もいるというではないか!」
「メンバーの選定は、キース様が主体で決められたものだ。」
「であっても、騎士をもっと!護衛にお世話係、人数が足らないだろう!」
自分の息のかかっている者を入れれなかった腹いせか。
ハァ。
ため息を隠さない。
「安全性、武力、ともにバランスの良いメンバーが選定された。この城の団長として許可した。お前に決定権はない。」
まだ何か言いそうだが、同じことの繰り返しだ。
「口を慎め。」
媚を売る機会を無くされ、不評を買っている現状に憂うのではなく、更に我が道を行こうとするのは、渾名通りの強欲さか?
その様子で分かりきっているが、この男の相手も疲れたな。
騎士団長として、命令をちらつかせれば部屋を出ていった。それを図ったように兎獣人の男が入室してきた。
本当に、帰ったのを確認して来たのだろうが、言葉はそれを感じさせない。
「また来ていたのですか?」
「他にやることが無いのだろう。」
「ここで大人しければ、マシな赴任地でしょうに。」
新兵の鍛錬場とされる『極北の城』だが、文官の他騎士の査定も行っている。
贅肉と言われ立身に執着する男は崖っぷちだ。
後がないのをわかっていない。
「肥え太る間もない所へ行く事になりそうだな。」
もう構う事もない。しばらくは大人しくするしかない。その様子も報告されるので、貴人の帰還の頃にまた警戒すれば良いだろう。
護衛にも伝えてある
そう手を回し終わったため、押している仕事に取り掛かる。
今日は妻、カトレアとの面会日だ。
そうだこの男に伝えておかないとな。あの子の意思を優先させるとはいえ、口を出さずにはいられないのだろう。
私の方は、妻の身近に居てくれれば心強いため賛成だ。周囲人員の異動をする事にしたからな。理由を言えばこの男も納得は示すだろう。
感情が理解するかはわからないが。
その気持ちもわかる。子供の決定や行く先に口を出したくなる。
今回、『北の砦』へ行くメンバーにライルが居たからだ。カトレアの方には挨拶していたようだが。団長であるため書類での報告だった。
それが少し寂しいと感じるも。息子の成長を感じる。
ただ、セリに興味があるのは…いかんとも。
番持ちに気をやるなとは、あの年頃おそらく初恋なのでは?
周囲が気をつけるしかない。ザイルが付いている分安心材料ではあるが。
確かに強い子だ。竜人ロードと向き合っているため、事件になることはないと思うが。
最悪を想定する必要があるか?
それに息子きゃ、一兵が関わるのは避けたい者だ。
団長としても、父親としてもだな。
だが。判断を間違えるつもりはない。
それがここを任された私の使命だからだ。
まずは、この書類の決済か。こう言った仕事慣れるものだな。
以前、剣を振っていれば良いと言ってた自分との変化を思った。
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