36-拠点作り
疾走
突然に出発を告げられたメンバーが、前後のグループに分かれ進む。その速さが風のようで、少数の利点を活かし距離を稼いでいた。
この中で一番雪道に慣れていないのは、新人の枠から外れている獅子獣人。子どもでもその身体能力は秀でているため遅れはない。
ソラスは後ろから全体を観察していた。それはもう癖のように。
オッサンの方(ザイル)は、現役だ。
鍛え上げ、動きも安定しているし、新人(ライリー)を気遣う素振りもある。
ジブンは、土魔法では足を速く進めない。体力が劣るとは思わないが、それでも速い行軍だ。なかなか即席で纏まっている。
前のグループ、商人の男も息が上がってきていた。フォローにカナンがついていて、安定感はあるが。高価な魔導具でも持っているんだろうか。
金持ってんなあ。いいや、支援者の存在か。キース様を見る。
研究者(グスタフ)の背に、慣れたようにおぶさり悠々としている。
いや、悠々とした顔以外見たことないな。
笑いながら、圧をかけられるタイプだ。
怖っ。思い出すと尻尾が丸々って。ジブン、大人しくしてるんで勘弁してください!
密かにため息を吐く。息を整えながらも走る。
『待機組み』の任務内容に、過酷さは感じないが。しばらく帰れないベッドに未練があった。
ジブンがねじ込まれた理由っていうのも、あの人間の子関係なんだよなあ。竜人が持つ、いや背負っている荷物と化して。動いている様子はなかった。
そのセリは、ウトウトしていた。
ロードの背の上、ビュンビュンと風を切る音が聞こえても、寒さは感じず。その滑らかな移動の振動を感じていた。
貴重な体験である。そして体力温存。
グスタフの案内で向かう拠点場所で、野営すると聞かされそれまでにやる事といえばセリは待機だ。快適な移動要塞のようなロードと、先を行くグスタフの移動は全体的に安定感があった。
道の指示から、魔物の索敵までお手のもの。魔物除けもしているが、その感覚で事前に察知する。安心感に包まれていた。これぞプロフェッショナル。
音の消さない行軍は、威嚇の代わりにもなる。魔物もちょっかいを出せず、追いつこうともしない。
白い雪と木が続く。獣の道なのかドンドン進めた。目的のその場所まで、走る。
キースとセリ以外。
それはそうと、もし極北の城の兵士達が、このメンバーの荷物も少なさに驚くだろう。荷物が少ない。(※キースもセリも荷物には入りません)
グスタフの研究道具は、カナンが持っている。“楽なもんだ”と顔に書いてあり行軍の速さにも繋がった。
「フゥ。結構きた?」
「あー。まだ目的地の川にはかかる、よな。」
シュルトの息が上がってきていた。かなり距離を稼いでいるが。
まだ森は続く。
その上、雪の影響でできた川と既存の川が分かりずらい。
「目印のポイントが近いな」
後ろにつくソラスという名の犬獣人は、余裕が見えた。
「あー。残念。まだ実がなるには時期が早いわあ。」
目印にしている木になる実。酸っぱいが、みずみずしく美味しい。
セリは、酒に漬けてある瓶の記憶があった。
「ちょっと休憩?」
「まだいけるんじゃないか」
小休憩。道の確認に、ポーションが出された。
「ン、行きましょう。」
シュルトのドーピングをして、進む選択になった。
途中、戦闘らしいものもあった。オオカミの魔物かなという吠え声。
「牽制だけで切り抜ける」
集団で追ってくる習性があるため、グスタフの判断で傷つけず遠ざかった。他には…
「お、フォレストバードですやん。肉が美味い。」
即、ロードに狩られた。おさまってきた雪に出歩く魔物も多くなっている様子。
「おっきい。」
“美味しい肉”の言葉にひょっこり、セリが顔を出してきたのその目はしっかり起きていた。
目的地である拠点のポイントには川がある。そこで、解体を手伝うつもりなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます