33-お茶会
「帰って、来るの?」
「うん。戻ってくるよ。」
すんなり答えられ、驚かれる。
久しぶりに会う兎獣人の女の子、リリンは怒ったり涙ぐんだり忙しいまま尋ねられ、セリが答えた。
今度は、キョトンとした後、小言が始まる。なかなか会えなかったのは本当なのでセリは、甘んじて受け入れた。
今日のお茶会のホスト、カトレアさんがその様子を微笑ましそうに見守る。面識のなかった筈の2人だが、セリが声をかけたのをきっかけに、親交を深めたようだ。
今回の面会はお茶会に形でマナー講座でもある。可愛いお菓子付きなら大歓迎だ。護衛は部屋の外にして3人だけでのんびりできるように、部屋を借りた。
(心配かけたのか)
セリはしみじみ感じた。気をつけなければ。余計な心配はかけない方が良い。
リリンは仲を深めマナーを習っていたらしく、姿勢も良く雰囲気も落ち着いた。もどかしさそうだった内面が変化し、大人との交流が良い方に向かったのかもしれない。
セリは“待っている方もツラい”と知っている。
その待つ時間は祈りをささげるような、落ち着かない心情を。しかし、教会では日常と隣り合わせで、セリは出て行く方だった。
それ故に、リリンへの配慮が足りなかったのだろう。ずっとこの状態のリリンに付き合っていたカトレアの内心を思う。
(挨拶に来ただけ、一応及第点は取れたかな?)
手紙のやり取りには、近すぎる距離だが、慌しく動いているとあっという間に日が経っていた。
そんな挨拶の後、
目的地、『北の砦』について知らないか、団長の第二夫人であるカトレアに聞く。
「どれくらい遠いかわからない、ですか。」
「砦?住んでいる人なんているの?」
リリンはやはり知らないようだ。マナー込みのお茶会は、言葉遣いは免除されている。そのうち解禁だろうなと少々言葉遣いに気を使う。
「全然話を聞いたことがない、くらいだよ?」
隣の人間の国に城があるくらいは、知っていたカトレアさん。
セリはそっちに近い位置に住んでいたと思われるため、
“この『極北の城』の話は聞いたことがない。”で周囲も一致していた。
「森の、魔木対策で地図は見たけど」
騎士だった事から、軍事機密らしい話も混ぜられた。
詳細な地図の管理は大事らしい。
背もあり、体格が良いカトレアは、スッと伸びた背筋。今の格好は貴婦人だが、剣を持っても様になる凛々しさを想起させる。
「女性貴族の護衛が主な任務でこの極北の城には来たことないの。」
獣人の鍛える場であるため、『極北の城』には、新人とベテランが混じっている。文官も多い。
「戦闘訓練を目的としているのと薬草の研究ね。」
魔物を呼ぶ木ができてしまうのを<観察、魔物の討伐>も任務のうちよ。
医療棟、住民を守っての兵士の多さの理由か。
「騎士と兵士の違いはなんですか?」
格好だろうかとセリは思う。
「主に、貴族かどうかね。戦いに赴く力を鍛える兵士と違って。
騎士は、貴族との関わりが増えて、指揮官に上がることもある。
書類仕事から、鍛える側になる。ここと分けるため、護衛専門を名乗る者もいるわ。」
セリの知っているのは、“セレナーデ”。
2人の犬獣人と熊獣人の組み合わせ。セリの部屋の外の護衛にもついている。なかなか部屋の中の護衛はしない。
その理由は、ロードだ。
狼がいるから十分だろ?セリの関心が移るので、気に入らない部分もあるが。正直戦力的に動けるカナンがいれば間に合う。
相性の問題か、俊敏性は劣ってしまうのは無理はない。それほど竜人は強者であり、狼獣人も力はあるのだ。
前半は、
女性の集まりのお茶会にしては、話の内容が華やかではなかったが
お茶の淹れ方やお菓子の話など。
和やかに進んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます