32-顔合わせ

「装備は良いから、持ち物カシラ?」


シュルトは参加らしい。


食べ物を多めに、魔導具は良いものを持てるから。


保存食を料理できるように

「酒〜!と暖まれる飲み物が必要だなっ」


「移動は?」

「徒歩と川を上る。」


「そっちの準備は任せるのね?」


「兵士がやるよー、なあ?」

カナンだった。


「川上りの訓練とかあるからな。」


「水棲の魔物は厄介だと聞くが。」



連絡取れるし、





知っている顔が多い中、知らない人がいる


「どもー今回情報部から来ましたーいじめんといてねえ〜。」


変に明るい犬獣人のようだ。


「第七のトップがきたのか。」

「それは内緒やてー!」


変な人、カナンは知り合いらしい。


セリはちょっと離れた。

(あまり近づかない方が良いかなって。)



ロードを盾にしたが、落ち着かせるような撫で方をされた。


「お嬢さん、人見知りかなあ?」


スルー。後は知っているので、特に思うところはない。


「時期は、グスタフの予報次第だね?」

「5日後を目安に、出発予定だ」



「早い」

「野外の訓練内容と変わらないな。」





「釣りですか」

「覚えると良いだろう。」


「待機任務。さっむそ。あんのお、護衛が必要では?」


「ロードにグスタフ、カナンもいて、いる?」


「竜人は人の子へべったりでしょ?なら、もう1人…」


「セリには俺がつく。」


「ンー。アタシも待機組みカシラ。」


「5人も6人も変わらないんじゃない?」

「マア、セリの状態を気にする役目だし。」


キースとシュルトの話に、護衛の追加はないようだ。


「君は待機組。」

「はい。」


ちょっと冷たい対応だけど、動きやすいメンバーが良いのだろう。

一度、団体で移動したメンバーだった。


“一番足を引っ張るセリに、ロードがついていれば問題はない。”


怪我した場合。



氷漬けになる周囲も

雪のある土地なら問題ないのかもしれない。


(部屋では寒いが。)


氷漬けになりそうな、新しい情報部の男に


やっぱ来るのかとため息を隠す。


そんな顔合わせが終われば、セリの予定もそれほどない。


“医療棟に顔を出す”

お茶でも一緒にどうか?と手紙ももらっている。予定が決まったので、その報告も兼ねて訪れたい。


これは早い方が良いと思った。シュルトの質問で気付いた。戻ってくるつもりでいるセリだが、そう思われていない。


(なんですぐ帰るって思われているんだろう?)


セリが知っているからかもしれない。孤児院はかなり遠く、ここは知らない地域だ。早々に帰れるとは思っていない。話に聞いたこともない城にいる。つまり、相当遠い。


『極北の城』という名だが、多分それより北に位置する山の裾にある隠れた集落にある。


来ている商人も、あると知っていて尚、悩む場所。

運命神を祀る、教会。孤児院として子供が身を寄せ合った。


あの場所に


帰りたい気持ちはあったが、焦ってはいない。

心配させていると思うが、祈る日々をおくっているだろう。


それが日常。

この過酷な地だ。顔を見せて元気でやっていると伝えられれば満足だ。


セリはそう考えて落ち着いていた。

そしてその後、(そのあと?)


とりあえず、クロウに会いに行こうか?冒険者になっていると思う獣人の子に、何の縁か家族に会ったから。それだけ伝えておこう。


(後ろめたさも残していそうな、気にしなくて良いのに。)

それでも気にしそうなクロウを思い出した。


そういえば名前を聞いていないか。

当時名を名乗らなかった子に、クロウと呼び名を付けたにはセリだった。

(まあ本人から聞こうか。)


それまでやはり、クロウとしておこおう。

会うのもきっと、ずっと後。


(雪がなくなった頃だろうか。)

そう思って見た外は、やはり雪が降っていて。しっかり積もっていた。




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