27-貴賓室

急遽の外出であるが、護衛任務にはままある事。

護衛対象の急な仕事や、予定変更に止める制限はない。


しかしながら、

“護衛対象2人とその1人にくっつく要監視の客人を連れて”だと、楽でもある。その本心を隠しながら今日の護衛は、油断なく歩いている、


たとえ、呑気な会話が繰り広げられていても。表情には出さず、貴人の要望が当然のように通った状況でも。


(文句はないのだが、凄い状態だな。)

部屋の外の護衛についてたアレクセイ達は共通した思いだった。


部屋のそのままメンバーで6人と部屋の外に居た3人。

「僕の部屋に戻る」と皆を巻き込んだ張本人。その横に、竜人と護衛対象の子供だ。戦力的に考えると、前衛は完全に過剰戦力だ。


先頭に狼獣人が、道を進む。心なしか呆れた顔であるが諦めている風だ。

その後ろに我々3人が付き、研究者と商人がついて来ていた。


とても目立つ集団だ。


護衛任務で、護衛対象のセリが監視対象の竜人ロードに抱えられ移動。

貴人であるキース様の護衛をカナンが勤めれば、これだけで問題はないだろう。


このメンバーに力では勝てない。

狙い目と思われるセリであっても、強さはあると知れたのだ。


しかし、任務であるからして。

過剰戦力の後ろを守るように3人でついた。他に場所がない。


移動について我々に否はないのだ

向かっている先は、警備の敷かれた貴人が住み地域である。連絡が行けば、より護衛がしやすい環境だ。


『優先されるべきは、護衛対象の安全。』


目立つ集団も人目につくより先に通れば良い。ちょうど良く、年少の子供が運ばれているのも移動を早めていた。どうも会話のしやすさから、この形になったのか?竜人の番に対する独占欲か。


判断はしかねるが、安全性は増した。


「僕の書棚にはね、魔術論の本が大半だけど。その魔法陣に組み込む植物についての本もあるんだ。セリの興味を惹くと思うね。」


手持ちの本の自慢だろうか。ここの図書館にも蔵書は多いが専門者やはり数が絞られる。読み物が多くなるのも仕方がない。


子供に読めるのか?は私が気にすることではないだろう。


「媒体、血のイメージ。」


子供から聞きたいワードではなかった。魔道具にも血抜きに使うと便利なものがあるとは知っているが。


「古い魔術は、血がポピュラーだね。魔物の魔石のが安定して力を引き出せるってなるけど?」


専門的な話が続く。


じっと見ながら、貴人の話を聞く姿勢は評価しよう。私でもわからない言葉が羅列している。


そのうち、竜人から声をかけられている。

「汚い物は触っちゃダメだぞ?」


確かに、血はダメだ。頷いているから大丈夫だろう。


「血はないよ?特別性のインクはあるけど。あれって血が使ってあったっけ?」



「何個かわたしたわヨー!」

後ろから声がかかった。人間の商人でも聞こえたらしい。


「どんなインクだ?」研究者の興味を引いたようだ。


それぞれが自由にしているが、護衛はしやすくまとまっている。

所々、ツッコミたい話もあるが。護衛に集中だ。


「そうだ、夕食も食べてく?デザートも逸品だよ。」

「フルーツ…。」


「果物が出んなら、食う。」

「オッケー。シュルトに言っとけば良いでしょ?」


このメンバーで食うのか。それはまた。威圧感満載だなと関係ないと思っていた。


「あ、カナンが護衛ね。人数が多いから、君らも?」


今日の夕食は遅くなるらしいことが決定した。問題はないのだが、なぜか気疲れするメンバーだなと思ってしまった。


思うくらいは、許されるだろうか。

「ハッ!」と了承に挨拶をして、部屋の区画についたのだった。


目的に部屋まではまだ、もう少し先だ。




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