26-飴玉

(カナン、疲れてるのかな。)


あのため息は気持ち的に疲れたヤツだ。そう察知したので、後で花の蜜をあげようと思う。


(そうだ、飴)


作り方ってあったな。

薬草の飴を作った事がある。甘みと薬草の苦味を抑えてくれる。喉にも良い飴だった。


ここには砂糖があるようなので、紅茶に入れているのをよくみる。


買って作れないか。持ち歩けると少し安心。

単独行動を起点に思考で考えていた。


未だにロードがついているのに、これからを考えられないのは環境や保護者の存在にピンと来ていないからか。


後で相談しよう。

ロードとシュルトに相談し、カナンにあげると言うとロードから吹雪が起こる事になるが、セリがロードに直接口に入れた事でおさまる。そんな未来がすぐそこだ。



それに関係ないシュルトとグスタフの打ち合わせは続いていた。

「装備の点検に、備蓄は出してもらえるとして、個人の荷物のチェックね。セリ用も必要ダワ。」


「現地で、採取や狩も必要になる。」グスタフの意見は研究で野外になれた発言だ。


ここからの距離を考えれば、現地調達も考えるべきか。木の実がなっている頃合いかとセリは記憶を取り出している。


「魔導具の使い方講座とかカシラ。」


値段度外視で使えても、使い方がわからなければ意味がない。


「メンバーが決まったら、だね?」

“すでに決まっているんでしょう”と聞ける者はいなかった。


(決まったら話すんだろう。)とも思う。


趣味で秘密にするより、今後の展開が不明な点でもあれば伏せるタイプだ。たまに遊び心で話さないとかあるが、この件に関しては違うだろう。


「じゃ、そろそろ仕事に戻るかな?」


護衛を3人、連れて行くのだと思ったが、部屋の前にまだいる。セリはシュルトに飴の話をしながら、なんとなく気になっていた。


キースに声が聞こえる。そう大きな声ではないが、通りが良いのだ。

「じゃあ、連れ出せばいいかな?」


何に話だろうか。

「飴なら、買ってあったわよね。お湯を注いで飴茶にするとか。でもやっぱり、喉に良いわヨネ。」


ロードも鞄の中から取り出しているが、

「苦いのが多くないか、甘いのは?」

「これは甘いんじゃない?これはダメよ!辛いわ。」


なんか飴にも辛いのがあるらしい。セリはその綺麗な赤色に警戒を覚えた。使われているのは唐辛子などの辛い味で、体を温めるのに使える。


酒に飴なんてものもあるが、セリの口には入れられない。子供にはまだ合わないだろう。


見た目じゃわからないなあと見つめる。ロードの手のひらに乗った飴が選別されて行く。


「匂いでわかるんでしょ?」

「混ざってわからねえ。」


「そこは、なんとかしなさい。削って食べてみるとか?」

「よし。これ、リンゴだわ。」


セリは、ロードに向いて口を少し開けてみた。リンゴの飴が入ってきた。

(よし。)さりげなく、食べれた。


舐めると優しい甘さが広がる。


ロードは次も入れたいと、飴を探し。

シュルトは手元の飴を見て気づかなかった。


少し離れたカナンが、飴の行方を目で追っていた。

なんとまあ甘いこって。


何やら部屋の扉のところで揉めている。キースの声と護衛の声なのでトラブルではなさそうだが、役目上すぐに行けるような位置に待機中だ。


そろそろ、何か知らないが話は終わるだろうか?

そんな気配がして、部屋の中に伝わる声がかかった。


「セリーっ、僕の蔵書、見てみたくない?」


「行くー!」


飴玉みたいに食いつきが良い。

セリは即答した。

魔法使いと思われるキースの持つ本。興味しかなかった。


「ロード、行こう!」


ちゃんと声をかけてくれたのは、助かる。ロードだけ置いて行っても困る上に、いじけるからな。


どうもこれから、護衛対象が移動するようだった。

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