番外 キースと情報部

情報部にもたらされた、『北の砦』への到達任務。


護衛任務でもある話に、メンバーの報告書を見る。



「狼はそのままか。」

カナンが情報部から抜け、専属の護衛としての参加に、情報部は焦りを感じていた。



「情報部から外れているからな」

「誰かねじ込むか?」


『不要』と言われて、引き下がれない。


「団長からの働きかけは…難しいか。」

「人間の子の関係者でまとめるらしい。」


「キース様から、か。」


騎士のトップは団長であるが、この『極北の城』で一番の裁定を下せる議長。それと並ぶ、賓客の存在は突然だった。


そもそも、竜人が実際に来るのもギリギリ決まった事。その流れで王家の

血筋の方が来るとは。


情報部としてはてんやわんやな動きしかできなかった。上の方で決まった事とはいえ、なんの情報も得られないのならば…情報部の名折れである。


怒りに触れないための、情報収集も必要と見られたが。それよりも力や繋がりを求める輩が出て、そこを抑えるのにも苦労させられる。


トラブル続きと言える。

お偉いさんが動けば、よくある事だが。


今回の不安要素だった大型魔物

その討伐を達成した竜人の扱いさえ辿々しなった。竜人の力は話では聞くものの、実際目にしたものは居らず、手探り状態だった。



間に合わせの新人が多い、この城の状況で緊張を孕んでいたが。

今は混乱しっぱなしだ。


“番”問題


獣人の文化ではあるが、今はデリケートな問題になっている。ただの憧れでは済まない事態が起きているからか。


以前、狼からは悲劇惨劇の話を少し耳にしたことはあるが、今の若者にはピンとこないだろう。種族的に番への欲求が強い故のトラブル体質か。


人間の子の護衛専念したいと、去った狼の執着の形なのだろうか?

犬獣人が多いせいか、浮いていたあの男も変わるものだな。


竜人の番への執着も強いと聞くが。正直、全て分からないな。


必要な環境、思考や嗜好。

女子供が好みものなどよく分からない男ばかりだな。



竜人が外に出したがらないと聞いていたが。

2回目の城外か。


あの腕を見れば、新兵より動けるとは思うが。思い切っているなと感じる。



「護衛が名乗り出たか?」

「却下されている。」


あのキース様のお考えもわからない。護衛対象として大人しくしていた下されば良いんだが。出掛ける気満々だろうな。


メンバーの決定、準備の要請とおそらく議長の許可も得ている。手回しの速いものだ。


情報が追いつかない、いや、漏らさないようにしているのか。

確かに周りの鬱陶しい輩を撒くのには有効だ。


今回、要請が出た2名の名前を見る。


「新兵をこっちに巻き込めないか?」

「無理だろう。団長の、だぞ?」


「もう一人は…」

「性格的に、情報部は無理だろ。」


「頑固親父だもんな。」

「頑固だもんな。」


新兵の頃に、怒鳴られた経験があるんだろう、ため息をついている。


「情報部から、1人突っ込みしかないんじゃない?」


全員の視線がそいつに集まる。

「言ったな?」


情報収集ができて、そこそこの腕前。

今回の貧乏くじ役。


「オマエな。」

「え。」


意義は認めない。今回参加しないのは悪手だ。


情報のナイナイ尽くしは終わりだ。確実に意図を読まれる立場で、鬱陶しがられるが、情報部として意味はある。


「逝って来い」



貴賓にも竜人にも、なんなら狼にも。睨まれるだろうが、骨は拾ってやる。


任務としては、拠点の守りだからそれほど難しくはない。メンバーも新人と古参。オマエなら上手くやるだろ?


「そうと決まれば、それで進めよう。」


それぞれさっさと動きにかかる。これで了承をお願いしますって書類を通しにいかなきゃならねーからな。






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