11-別空間あり

「快適空間」


地下訓練場では、ブリザードが起こっている。


凍りつき、氷の柱

それに晒される兵士達を見ながらセリは現状を見た。


その場所とは同じな筈が、結界魔術が展開された中にセリ達は違った。

膜のように周辺の寒さを防いでいるのを観察している。

「ほい、お茶」


カナンから出された、香ばしいお茶は温かく観戦体制が万全だ。

お茶をすすって、音と叱咤の声を他所に

火の魔術を織り込まれた、綺麗な光がぼんやりと見えるを眺めた。


“火の魔石よりも濃い、炎の魔石が作られた結界”


(要人用シェルターといったところか。)

魔石のサイズからいって、超高額の匠の技と思われた。


セリに要人である意識はないが、この状況が予測できたため配備された。

魔導具のテスト運行でもあった。


「すげえなー。遠征でも使えたらいいんだけどなっ!」


『コスト面で難しい。』と答えられた。

整備も高い技術力と多大な炎の魔力を食うときく。


火の魔法では足りないが、安定した出力の難しい魔力でもあり、その技術力を集結して完成させた代物。その中は快適だった。


「踏み止まれ!体勢を整えるんだァー!」

演習の指揮官の声が届き、そちらに目を向けた。正直、吹雪いてよく見えない。


「あーあ。前進できねえな。」


カナンの言葉に、ぼんやり人の配置を予想する。模擬戦は

獣人部隊の団体とロード1人との対決。


それが、“猛吹雪のフィールドでの行軍”になっていて、


『凍りつく大地を想定した訓練』

そういわれた方がしっくりくる訓練模様だ。


「寒そう」

他人事の感想をセリが言った。


膝掛けまであるその別世界にいれば、そんなものだろう。視界不良で興味が持てないのも仕方がない。

パリポリっと焼いたお菓子を片手に、カナンと会話をして過ごしていた。



その様子を見る余裕のあるロードの方がというと。


ここに来させたのは、ロードの要望とに折衷案。

部屋に置いておくのは自分が寂しい。模擬戦に出せ?

セリの手を煩わせるなんて事しない・させない。


『見せろだって?嫌だね』


結界に包まれ、ぼんやりとした空間になったそこに、俺の番がいる。

連れてきただけ、譲歩だった。


茶でも飲んでいるのか、動きが見える。

じっと見ていれば視線に気づいたようで、手を振ってくれた。

その瞬間に、つい力が入った突風に何人か倒れたが。


些細な事だ。


そのセリは完全に飽きていた。

(いつまで続くかなあ)


氷から、その上に雪が積もってきた。ちなみに、ここは地下だ。


張り付く雪に、雪で洞穴ができるのを前に、訓練の一時中断が知らされた。


「そろそろ、地下訓練場が凍るらしい。」

カナンの補足に、なるほど納得の理由だと頷いた。


吹雪が終わり、土の訓練場だった筈が、『氷と雪の空間』になっていた。




「凄まじいな」


「防具の着込みが甘い!敵は、自然だけではないっ。

魔法を使う魔物もいるんだぞ!」


防具の使い方、その使い方の確認に

団体で動く中


ロードはセリの椅子をしつつ、カリカリと食べさせる。

(これも常備しておこう。)



続けるのか?


ここの整備をする。しなおす。


火の魔導具もあったが、それをうまく使えなかったらしい。

それがあればもう少し近づけただろうと


話をしている中


ロードに怪我がないかペタペタ確かめたが、

無傷。


風魔法を放たれたりしていたが、強力な氷魔法の前に

届かなかったようだ。


氷魔法への憧れ。


水は氷にならない。


その方法をあれこれ聞いてみる。


火魔法の魔導具がゴーゴー音を立てて始めた頃

部屋に帰ることになった。


何しにきたんだろう?

とせりが思ったのも無理はない。



お茶で温まりお菓子を飲み、手を振っただけだった。

護衛付き、結界の中。


(今度は本を持ってこよう)と思うセリだった。

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