10-訓練の相手
セリの希望、兵士の助力は得られると言葉はもらったが、
実際どう動くかは調査、編成の必要があるため、
待つしかない状態。それに外の様子からすぐ動くには難儀する雪深さだ。
その事には慌てていないものの、他はどうなのか?
カナンは報奨になったのか疑問だが、楽しそうなのでまあいっか。だって…
「暇つぶしに最高の環境だぜ?」
「護衛は面倒ごとのが多いって」その筈。
「上手いもん多いし!風呂付きで、高い酒と肴付き。
セリちゃんと居ると、退屈しないぜ〜。」
食事、酒狙いと“なんか起こしてくれそう”との期待。
トラブルメーカー扱いをされているの透けて見え、セリは不服に思った。
(私のせいじゃない。相手が突っかかってきている。)
機嫌よく動いたカナンの尻尾を見て、ほっこりしたが。
当てつけに、耳を見ながらロードの褒賞がどうなっているか聞く。
「ちょい条件がついたんだ。他の獣人との交流が予定されてて
訓練場に呼び出しとぉ、」
なんか、招待が増えたらしい。ロードにくっついての事だが、
行動範囲が増える予感。
「セリちゃんも一緒に行動になると思うよ?」
確定。
セリを知らないものへの紹介は模擬戦で済ませたが、まだ危害を加えないかの不安はあるらしい。まあ、徹底的にロードの怖さを思い知らせる事になるだろう。
“体にな”
と言っていたロードの魔力でその場が、ひゅおっと寒くなり、
尻尾がヒュンと内巻きになったのを誤魔化したのは最近だ。
そして複数人そうなった。
(あの魔力にも、性格にも馴れてきたなー。)
見た目の印象と、口数の少なさ。竜人の存在感は畏怖してしまう。
それが、番持ちになれば、わかりやすい。
全てが番優先で、至上主義。
その傾向が色濃い。まだ暴走していない方だという見解だ。
「その他、セリの教育面での先生を第二夫人、カトレアに依頼すること。友達誘って、授業って形になるんじゃない?」
獣人の文化を知っていた方が、トラブル防止になりセリを守る事に繋がる。
「友達。」
繰り返された声に、セリちゃんは誰を思い浮かべているか。
“誰まで入っているか”、把握はできている。
関係性を結ぶのに、自覚を持たせないようにしていた。
そんな圧力、ストレスだろうと配慮も結局…
(大人の事情だよなー。)
守られていると同時に制限を受ける。その立場を労わる意味で、
ぽんぽんと撫でる。
そういう接触があると、着替え終わったロードから
「近い」と排除されるのも慣れたもののカナンだった。
装備をして、移動だ。
地下訓訓練場にて姿を見せるのも、報奨へつなげるセリの環境改善の一環活動。その第一回目が早々に行われる。
まあ、まだ試合の印象が強いうちに。
歩き回れる範囲の拡大、セリの性格や立ち位置を認知させる。
(部屋に閉じ込めておけるか?)
ロードは願望として、番の囲い込みをしたいし
可能だが、“セリの思う通りにさせてやりたい。”と結論を出した。
セリが興味を示したマーケットへ行くのも、警備上の都合上行けなかったし、医療棟への面会も少なくしてもらった。
過去あった、セリへの“市民への攻撃”。違反事項なのだが
どこにでも、バカはいる。
『新兵だから』で、城が壊滅的になる・できる力を持つ相手への喧嘩を売ってるんだぞ?
『洒落にならない事になって気づくなんて、巻き込まれる方はたまったもんじゃない』
そう言った兵士に、皆同意していた会議を思い出しているうちに
地下に到着。
セリは見学。
兵士達の視線が刺さりに、刺さっていた。
模擬戦での注目度、その力を示した人族をこの目で見て
好戦的な視線、まだ懐疑のある眼。
物珍しいものを見ている興味。
その全員に、竜人の魔力がヒュオっ!とひと吹きして身構えたのは、兵士として相応しい反応だった。
“何見てんだよ、こっちを見やがれ”
と挑発的だったからかもしれない。
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