番外編 夫婦

夫婦とはいろんな形があるものだ。


というのは、私が第二夫人と言われていて

貴族の家に嫁いだからだ。


過去の自分に伝えられたら、嘘だあ!と笑うだろう

現在。2人の息子を得られて、仕事もなんとか慣れていた時。


子供をひとり失った。

行方不明。その報告を受けて、目の前が真っ暗になるという体験をした。


その後は出来うる限りの手を打ったけど。

取れる手段さえ、少なかった。


消えてしまった…私の子。

“何かの陰謀に巻き込まれたと思われる”の報告。


端的に言って、

絶望だった。


私は。、もう1人の自分の子の存在に支えられて

なんとか保たせれいたけど。


身体を壊した。


休養を勧められ、


ここにアクレイオス様の赴任に付いてくるのも

疲れてしまったのか。

いいや、

希望に縋りたいから。


あの子の消えた足跡は、こちらの方角だ。

人族の住む国の方向。周りは…


『あの子のことは残念だが』

『早く元気になって』

『貴女を頼りにしているの』


私はそれらの言葉も受け付けなかった。

子供を亡くした母親の戸惑いばかりが、渦巻いていたから。


そんな状態が続いて、心も疲れてていたけど。

(今は大丈夫だと思う。)


ぐるぐる回ってしまっていた景色が、地に足がついたように安定した。


希望が微かに見えて、心は穏やかだ。

例え、偽りの希望で……間に合わなかったとしても


もう、ここまで自分を見失うことはないだろう。


「あの子のおかげね。」



今のこの城に状況に目を向けられた、

人族を目の敵にする方がわからないんだけど。

獣人にだって


私に子供を養子にと勧めるバカみたいな人もいたわ。

(もっとセリちゃんと話してみたい。)

そう思考に浸っていた。


コンコンッ

この時間帯に声がかからないノックだけで、来るのは1人。


「どうぞ」


「息災か?」


「ええ。何日ぶりでしたでしょうか?お元気そうで何よりですわ。」


元の私のような話し方に驚いている

アクレイオス様



ここの団長とはいえ

家族としての時間はない。

私達を家族の形から変わってしまっている。難しいものだわ。



「アレイには会っていただけましたか?」


「会った。あの子は・・騒がしいな。」


言われた言葉に笑いが溢れる。

アレイの教育は、自由にというかあまり関われなかった。

構ってあげられなかった私の状態もあるけど。



「模擬戦に出られるとか。勝利をお祈りしていますわ」


共通の話題が終われば沈黙だが

今日は、他に言う事があるらしい旦那様を見る。



「あの子供と会うな。」


「それは城の団長として?それとも個人的な事でしょうか。」


その後も堅い会話。

でも久しぶりに言葉を交わしたのに、清々い気持ちだ。


寝る前に祈る。

私の大事な子


あなたの道を照らす光があることを、祈っています。

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