第二十三話 母親
「その驚き方、ソックリ。」
思わず溢したセリに女性は、泣きながら微笑む。
「ええ。そうなの。私に似てるって言われてた。私の大事な息子なの。」
母親の涙を流して、そう言葉を紡いだ。
涙が止めどめもなく、流れ
セリは、女性の様子を伺った。
希望と落胆も合間にあって緊張している表情から、やっと
力を抜けたようだ。
それなら、そのまま涙を出し切ったほうがスッキリするだろう。
セリは、側で待った。
女性の慟哭の嘆きに、肩にそっと手を添えて。
そして、「カトレアと名前で呼んで欲しい」と
告げられるまで落ち着いた、第二夫人。
側仕えらしい女性が、お茶の用意と手土産のお菓子を出してくれた。
ちょっとした茶菓子と、長居しない旨を伝えてあり
そう時間はかからない予定だったが、まだ暇を告げるには早い。
そして
初対面という事もあり、会話のリズムが掴めないのか、
女性の方は、泣いた後で気まずいのか。
少々沈黙があった。
結局女性から「もう少し、息子かどうか
擦り合わせをさせて欲しい」と頼まれた。
「魔法が使えますね?」
「ええ。風の魔法ね。」
魔法を使える獣人もいるが、なかなか特徴が出る。
種族的な特性もあるからだ。
同じで、嬉しい。
もっと、男の子がどう過ごしていたか夫人は、聞きだがった。
「男の子とは打ち解けるまで少しかかりましたが、私が出て行くまでには
上手くやっていましたよ。」
あの厳しい土地では、協力し合うのが生き残る術
とはいえ、相性というのはある。
向き不向きもあって、毒キノコを見つけるのが得意だった。
どうも食用を見つけられなくて。
「人族ばかりで、大変だったかしら?」
「最初は、顔を覚えるまではだいたい距離がありますよ。
孤児院は人の出はあっても、来る事は少ないですから。
けど、
肉を持って帰ってくれる子を悪くは言わないです。」
「そうなの!」
その声は、関心の意味を含んでいる。
食事に肉があるのは喜び。それはまた。現実的な事だ。
しかし、とても大事だった。
「孤児院での食事は、基本的に保存食で凌いでいます。
お腹いっぱいとまではいかず。穀物や保存のきく野菜のみで。
しかも来客があれば、
“来客と”いうのは、迷い込んだりして泊まって行く人のことを言っています。」
セリの説明では、とにかく肉不足。
育ち盛りには、辛い食事情を伝えた。
それが、セリに加えて
狩りができるクロウが加わる事で、
かなり肉の保存ができた。
一食分、肉が入るだけで子供はわかりやすく態度でわかる。
その代わり内職の作業は苦手だったが。
適材適所は基本で、セリの負担が減ったので
ほんとに助かっていたと伝えたのだった。
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