第30話 到着

南門が見える。


まだ遠い位置だが。既に城が見え続く広い道に踏み込んだ。

木々が端っこに寄ったような広い道。

切り開いた、道なのだろう。


車輪が取られないように雪が慣らしてある様は、『極北の城』への道を歓迎しているように見える。


単に魔物と部隊とが戦いやすいようにしてあるとか?

セリは判断できず、ここを平にするのに1人だとどれだけかかるか考えている。



人海戦術

魔導具

セリが想像するほど積雪はない

1人でやる事など永遠にないが、雪かきは大変だと思う。


しばらくは魔物とも会わず、

雪景色が続く中からこの城が出て来た形だ。


(ちょっと感動した。)


目印にも良く

あの温かい部屋を思い出すと帰ってきたという気分になり。


安心できる。

急いで火を起こす必要も、食事が少ないこともない。


その感覚に戸惑いながら、大きな門の前までやってきた。

こんな扉が人力で開くのか?


見上げていても、今日は開かない。


右手に見える小さな門を潜って、中に入った。



「お帰りなさいませ!」

会うたびに兵士が敬礼と声をかけてくるのに肩が跳ねる。


(誰かに伝える警報か何か?)

出かけた時のように驚くセリを抱えてロードが進んだ。


最後歩いて部屋に戻りたかったけど、甘んじて受けた。

まだちょっとこわい。


兵士たちに適当に挨拶しつつ

全員で、グスタフの部屋へたどり着く。

ふぅーと吐く息は、会うたびに敬礼されるのは窮屈だったせいだろう。


「皆んなでお風呂行こ?」

「予約してある大きなとこね。」


キースとシュルトの確認の後

風呂に行くことになった。


が、ここでシュルトが待ったをかけた。

「セリも?」


「セリもだ。」応えたのはロード。


時間をずらす?一緒に入る?

どうしてもロードがセリにつく。

「まあそうよね」理解する。いや、説得を諦めた。


そして準備してたわ!と出したもの。


“沐浴着”


身を清める時に着る

濡れても透けない布地


共同浴場で、貴族令嬢が身につける品。


サイズはセリ用に縫い直していた。シュルトの判断で。


ロードがセリと入浴したいと言い出す予想

そうなったら着せるつもりだった。


お母さん的、配慮。

それができるのはシュルトしかいない。


実は砦でも問題に上がった。子持ちのおっさんばっかと入浴していたが、

10歳過ぎれば

『もうパパとはいらない!』

『イヤ』と言われている父親もいた。


砦に数少ない女性からも、問題視する言葉。


男と入れるのもあと少しと誤魔化すが。

しかし、個人の風呂などなく女の子とバレる方が危険。


貴族に、バレるのは避けたい。

沐浴着っぽいものを着て入浴させていた。


サウナもあったが、砦では魔法で沸かせる風呂のが回数が多かった。



お疲れ慰労に

大浴場でのひとっ風呂が追加された。


採取の成果と狩猟の肉は、後日のお楽しみ。


ひと汗流して温まろう

裸の付き合いの始まりである。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る