第26話 川

一行は、豹についていく形になった。

尻尾がくぃいっと動くのをセリは熱心に見ている。

動く度に視線が動いてバレバレだ。



移動に集中するため、地上を歩くセリの後ろにはロードが張り付いていた。気まぐれにこちらに近づいたら、確実にロードが阻む。


カナン以降は、ロードを盾に…いや攻撃線上にくるように位置どった。


豹の魔物は速さが俊敏で、獲物の喉を狙うハンターだ。

ロードより強いと言うことはないが、警戒は必要だ。


そして、キースの装甲では危険だ。少々緊張しながらカナンが歩くが…

前を行く2人が呑気に歩いているせいで緊張感を保てない。


シュルトとグスタフも、それ程緊張を感じている…でもないらしく。


「雪豹の毛皮ってすごい値がつくのヨネ〜。」

「確かに希少だが、自立したばかりの若い個体が

狩り尽くされた問題があって、禁止する法ができていた。」


「あー。闇ルートで売ってるって話?

パーティで着てたバカ貴族が騎士に連れ出されたとがあったね?」


(本人?の前でいうのかあ)と会話を聞いていたカナンが見えない角度で渋い顔をした。


前行く2人…いやセリちゃんには聞かせられない。


興味津々に見やっている純真なままで居てくれ。

後ろも素材の話で通常運転を繰り広げる様子に


(オレだけ仲間はずれですかね?)不貞腐れるのカナンだった。



そして何事もなく、木々が途切れる場所に来た。

魔物も現れず…って、当たり前かロードが居て、肉食獣がいるのだから。

利口なやつは回れ右だ。


(このメンバー、楽。)カナンは、精神的な疲れを無視した。


そして小川。

確かに水が流れていただろうが、今は足を乗せられるくらいに分厚く凍りついている。


表層だけ凍って、水が流れているのだろうか?

休憩地点にたどり着いたが、セリもロードも、豹の方を見ている。


その行動を注視している。


凍った川をコツコツと前足で叩いている豹の様子


「水を飲みにきたのか?」

ロードの言う通りこの地で飲み物は、川か洞窟で湧く温泉くらいしかない。


氷を火の魔法で溶かすか、獲物を獲った時に血で喉を潤せる。

若い豹は、川に水を飲みに来て困っているのか。


“スノウパレード”

氷の魔法が得意で、纏うことにより寒さに強い。

火の魔は使えないものだ。


これは、他の魔物が溶かすのを待つか

諦めるしかないか?


「お水飲む?」

そう言ったのはセリだった。


セリも氷を溶かす程の魔法は使えないが、


水は出せる

近くに浮いた水球をペロリと長い舌で舐めとった。


歯が目立つものの、愛嬌のある動きだ。


(こどもっぽい)


長い舌がぺろりと動いたので、もう2つ水球を浮かべるとかぶりつた。


思わず拍手をするセリ


「芸、仕込んでる?」

キースも見やるが、ほのぼのとした空気になっていた。


そして満足したのか、木々の方に戻って行った。


人に危害を喰われる魔物ではなく、小さな魔物も狩ってくれる。

「共生相手として殺傷しないように、通達することにする。」


そう通達したキースは「少し休もう」

予定通り、軽く食べたり飲んだりの号令を上げた。


キースは熱々の紅茶を飲んでいる。


シュルトが、チョコレートをくれた

セリが食べた物は。オレンジのピールが入っている。


「お、イチゴ!」カナンはイチゴ味らしい。



「セリ」呼ばれたとロードから与えられたチョコはイチゴ味だ。

「おいしい」得した気分のセリ。


そんな面々を視界に入れつつルートの確認をする2人。

「予定通り、遠回りに帰る。」


「湖に寄って、この洞窟は?」


グスタフの言うルートに変更はない。最初の移動で距離を稼げたのもあり、目をつけていた場所に行く時間は十分とれそうだ。


食事も十分。天候の荒れもない 。

このメンバーでは過剰戦力なくらいだ。


「散歩みたいに長閑ネ」


お茶のセットを準備するシュルトに言われて、ここが外という自覚は芽生えず、説得力のある画にはならなかった。

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