第25話 遭遇

巣の気配がないか、伺い水魔法で取り出す。


手を出すと噛まれるその前に逃げるが、セリの採取方法。

極寒の地で植物が耐えられる場所は限定的だ。

効率的な方法は、“横取り”。


通常の採取は、生息地域と環境に合う場所を探す必要があるので、今回は使えない。

なので、知らない土地での採取は、放棄された小型魔獣の住処を探した。

木の上で発見し、ついでに木の実や芽の採取も行う。


リスやネズミ型の魔物が居た形跡

(名前はなんだっけ?)とは遭遇しなかった。


魔物の名前は地域で違ったりするので、個性が出る。

神話に出てくる名前から、特徴の合う物の名前まで様々だ。


勝手に名前をつけていることもあり

小さく、チョロチョロ動く。


そのことを思い出しながら、セリは慣れたように、軽やかに木に乗り移っていく。

その木にウロがあれば、水魔法で中をさらっている。


「慣れてんなあ」


巣に溜めた素材を得ている。

凍ったものや枝に実をつけたり芽が出ていれば、アクアカッターで採取している。


食べられる物

鉱石。魔石


木の様子を見たり、触れたりしているキース様がよくわからない

いきなり走り出したり、木の上を移動されるよりは守りやすいので文句は言うまい。

「楽な仕事?」

「気疲れする。」


無愛想に応えるのも、オレを所属から引っこ抜いてきた相手からだ。

油断したら毛までむしられそうだ。

狼になることも知られているし、個人的に警戒対象だ。



「この木の皮、剥ぐわネ」シュルトが木の皮に刃物を入れ込む


それをキースの目線で許可を得て。、手伝いに入るカナン。

「なにこれ?」

綺麗に縦に剥けるが、薪にもならなそうな木の皮。


「染めるのに使うのヨ」

「へえ」


染めるものは人気だ。染め物、工芸品を作って冬の蓄えに加える。

染めるときの水ならたくさんある地域だしな。


雪も使えるが、水を使うことのが多い。



適度に探索したため、移動となった。


グスタフがセリに食べられるキノコを教えながら、歩く。

ロードが花を摘んでるのを見てしまったり。



目標ポイントの川のある方向へ歩いていた。


「あっちに洞穴がある」


「ダンジョンとか?」

「いいや、魔物の巣だな」


カナンとグスタフの打ち合わせに、セリが呟く。


「危ないから近づかない。」

「大型の魔物が居れば、パクリなサイズだもんね?」


コクコクと平然と頷くが、(子供に言うことじゃなかったとカモ)と少し反省する、(精神がささくれてるな。気をつけよ。)


「危険に近づかないのは偉い」

セリちゃんを撫で、ロードに睨まれるのがセットだ。


(コイツこそ危険なんだけどな。)


だが、ロードの竜の気配の影響で、全然魔物が来ない。

Uターンしてお帰りいただける。


何匹か兎型が逃げ去っていった。

(あいつ、うまいけどな。)


手頃な獲物は見込めないか、お守りとしては最高か。

そう思った時に目に入る…



「ヒョウ」


雹ではない、豹。


キースを守る構えになるが、

前の2人ロードとグスタフは、観察する様子だ。



のそりと獲物を狙う動きではない。

気配も隠さず、殺気もない。


「若い個体だな」


グスタフの呟きは、緊張感もなく人に慣れていない親離れしたくらいである事を伝えた。


その肢体は滑らかな毛皮と、魔力による輝き。

肉付きの良さや雰囲気から言って、強者の位置にいる魔物。


恐いもの知らずなのか、興味本意でここまできたのか?

城に近いところに凶暴な魔物がいるのは危険だ。


「どーすんだ?城に近くに住み着いた強力な魔物として、狩る必要があるか?」


人を襲ったことがある魔物は、味を占めているので道の近くに出た時点で討伐対象になる。


今回の決定権は、

キースでもロードでもなさそうだ。獲物に手をかけていない、グスタフでもない。


じっと豹の魔物を見つめている、セリにあると思われた。

“なんだろう?”といった調子で見ていた相手は、川の方にゆっくり進んでいく。


「オレらも、あっちだよな?」


カナンが指す方向。

行き先が同じなため、ついて行く形になったのだった。

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