第14話 噂と他ごと


「楽しそうなコトしてたね?」


優雅に紅茶を飲んだキース様だった。

見慣れたロードの部屋でも、


お茶会の煌びやかさを一緒に持ってきたようで

しゃんと背筋を伸ばしたくなる。


楽しそうなコトは、塔に登ったことだろう。

『楽しかった!』と答えてはダメだ。


怒られる。言わなければ、まあ?お小言で済ませるけど

っていう空気だ。


セリは察知した。よくよく聞くと

ちょっとした噂になったらしい。


氷の棘は塔の下に謎の氷柱として横倒しに集められ、

塔の壁には、妙に雪の跡が。

雪玉をぶつけたような痕跡が、頂上まで続いた。



塔での目撃者はいなかった。

見回りも異変は気づかなかった。

怒られてないと良いけど。


鳥かな?と思い過ぎた影

暗くなっても、雲がかかれば良くあること。


見た人がいたと。


「寒いのにまあ。元気だねえ?」

妙に年寄りくさい言いようだった。


『やってみるか?』聞いたら、断る様子が簡単に想像できた。


「まあ想像通りの結果ネ」


噂になってシュルトにも届いたのは


でかい魔物?誰かの魔法に練習

目立つたがりの失敗作


『あれなんだ?』

『変なの』

『まあ気にするな』


という流れだった。誤魔化しとも言う。


極北の城では力が有り余っている若い者が多い。その中には

変な事をやる者もいる。バレず迷惑かけなければ、ほぼ黙認だ。

上官にチクリと言われるが。


体力も有り余る元気な若者に、じっとしてろは酷だ。

鍛えてやるが?仕事も色々ある。


悪質な悪戯じゃなければ、報告で終わり。が実情だった。


真似る者がいると困るが…

「アレをどう真似るんだよ」


カナンの言うように

鳥獣人でも風が強くて、塔の下から上がるのは難しい。

飛ぶなら、助走をつけて塔の上部にやっと着く高さかな。


そう言わせる程。寒さや塔の高さは、なかなかだった。


そんな渦中の騒動の中心人物は

「もっと動きたい」楽しかったようだ。


焚き付けた形のカナンは複雑だった。

「あの降り方はどうなんだ?」と思わなくもない。


けど、キラキラお目々なセリでした。

文句も引き止めることもできない。


そもそも、ロードが番の危険と判断していないので

セーフ。


世間的にはアウトだと思うが。


「獣人の子でもあんなコトしないぞ?!」

「雪にも氷にも慣れていないからだろ。」


雪かきの経験もない者もいる。

だからと言って、アレをやらせるのはぶっ飛んでいる。


やる方もだが。


「そう?仕事を持ってきたんだけど、どーかな。」

セリに向いて言うキース様に、食い気味で聞く。


「どんな仕事!?」

保護者付きでも、訛った身体には欲っしていた機会だ。

仕事と言うからには、お金も発生する!


“内容はちゃんと聞くこと、約束や証明できるものもあればよし

条件や達成できなかった場合のことも決めとけよ?”


冒険者をしていた男の助言で落ち着いて話を聞く気になったが


「外、行ってみたくない?」


それだけで、魅力的だった。

「行きたい!」と叫ぶのはもうちょっと待って。


まだ、やると言ってはダメだ。

目の前お貴族様は、油断できず手の上で人を転がす事も

簡単にできる人なのだから。


そう頭で思っても、セリの体はウズウズと動きたくってたまらないと訴える。


その様子で内心はバレバレだが、

子どもらしい元気さに、一同から温かい目で見守られた。


番が喜んでいるの良いが、自分がもたらしたものじゃないので

ちょっと不満だったロードは、その飛び出して行きそうなセリの体を

捕まえて、頭を撫でて落ち着かせるのだった。


「当然俺も行くぞ?」

「そうだね?まあ少数のグループで行ってもらうつもり。」


シュルトがその言葉におや?と反応し、嫌な予感がするカナンが身震いした。


そんな雰囲気に関係ないとキースは微笑む。

セリは、ボールを投げられる前の犬のようにワクワクした目で

キース様の次の言葉を待っていた。


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