第10話 権力

シュルトの後ろには、キース様。


今日はさりげなくも高価な装いだ。

(貴族への礼ってどんなだっけ?)


セリが混乱している間に、カナンが疲れた様子で入ってきた。

予期せずいつものメンバーで

お茶会のような席順になる。


スィーツを並べられる。


(クッキーにお茶。その上

ケーキは、食べすぎだろうか。)


じっくりかんがえるセリに、シュルトが声をかける。

「軽いから大丈夫だと思うわよ?」


シフォンケーキ。生クリームが優しい味でイチゴ添えられる。


呑気に食べるセリ、世話をやくロード。

いつもどおりの時間に、キースがセリに言う。


「んーまず、仮市民になっとこうか?」

「もうチョット、説明しなさいよ。」


にっこりと微笑み、シュルトに説明を促すのが馴れを感じさせた。


「ロードの番とだけでは弱いから、仮の身分を発行するって話。」


「砦を落とす。

軍を動かさず、少数精鋭で無血解放させようか?」


とんでもない案だった。


「オレも入ってんの?」

「まあ。ロードを動かすのに、そっち側の監視が必要でショ?」

カナンとシュルトの会話は、城でのパワーバランス、派閥というやつか。


「そっちに利点がない」

セリがズバっと切り込む。

“相手に何を求められるか明確にしとけ。

足元を見られる、掬われるぞ?”


交渉は明確にしとけと言われたのを思い出す。


「僕がセリを支援する。今後の学業、おまじないの解明。

これって、回復魔法と相性良さそうなんだよね?」


セリが作った、おまじないが気に入ったらしい。

ファント教の主力、事業と言ってしまえば商売になってしまうが

資金を集める仕組みだ。


そこからポーションの研究や人材育成を担っている。


「あの水魔法の熟練度なら、回復魔法もできるかもねー。

薬師の道も有り?」


「俺も込みでか?」

ロード。竜人の力も使える、と。


「そこは、オマケだね。僕は狙われているけど、護衛はちゃんといるよ?」


もぐもぐ食べているセリが思いつきを言う。


「ずっとじゃなくて、依頼にしたら?」


専属で侍る方法ではなく、優先的に護衛の依頼を受ける

にすれば、ロードの自由度も上がる。


セリが動かなければ、同じところにいるだろうが。

身の振り方を考えるのに、支援者がいるのは助かる。


知らない土地で、知り合いもいない。

紹介があった方が勉強しやすい。


砦に戻りたくはないし、ロードといるなら勉強は必須。

セリが弱点になるのは明らかだ。はやく防御は固めたいところだ。


支援を受けるなら、互いに利益がわかっていた方が安心だ。

キース様なら最適?どれくらいの権力か。

市民権を出せる程、どこから横槍が来るのか?


考えることは多いが、ケーキが美味い。


「確かに。ロードがいてトラブルも多いんだから

切り札扱いのが、お互い良いんじゃない?」


「それで仮市民か?」


街の滞在の許可、紹介者付きは信用度が違う。

家を借りるにも優位だ。


「功績を上げないと滞在権は得られないね?

まあ買えるんだけど。」


ちらっとロードを見たのは、

たぶんそれほどの財はあるよね?って事だ。


推薦もいるし、有益だと示される。


「セリの待遇も他の兵士の証言がとれれば、クリアできるでしょうネ。」


砦の兵士を助けたい

セリの希望の実現に近づいている。


「お願いします。」

セリは大人達に協力を願った。


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