第3話 計画

『騎士に有るまじき態度だった。申し訳なかった』


低い男性の声が謝罪を言った。

言っている意味は分かるんだけど、目の前の可愛い小鳥と合わない。


(んん?)違和感しかない状況だ。


シュルトが持ってきた、小鳥に似つかない声にセリは地味にショックを受けている。


「音声の手紙よ。あの騎士の上司からの謝罪ネ。

会うと怖がられると思ってこの形になったのヨ。」


「気にしていない。」

目の前の小鳥は気になるけど。つぶらな瞳が合わず、身動ぎもない。


「触っていい?」シュルトに許可を得て指で撫でる。

少し羽がごわついているだろうか?


「『造られた器』だな。音声を伝えるだけか?」

「ええ。それヨ。」


大枠で魔導具だと聞いたけど、油分が足りてない羽だ。

首を傾げる仕草が可愛いかった。




次は、グスタフさんの研究室にお邪魔した。

広い机に大きな地図が広げられている


どーんと森が広がる。植物の分布のメモらしい書き込み。

「山々のひとつ、その麓に村がひとつ。そこから山を少し登った孤児院…か。」


(そんな情報で場所を特定できるものか?)

セリが言った情報では本人も無理があると思う。


記憶では山の上には凍った湖しか特徴がなく、植物も少ないそこは、信者が礼拝に来たと聞くだけで、そうそう人が来た記憶はない。


少なくともセリがいた期間には。


「ここら辺だな」

グスタフの指の先はぐるりと大きく回る。


(たぶん合ってる。)

方角は。その範囲が広いのは仕方がない。


「特定する材料が少ないわよネー。」


シュルトも特定は難しいと思いつつグスタフに協力を仰いだ。

記憶も疎ら子供の言う事と、植物の分布、

それと、商人の情報があれば?


行く方向はわかった。それだけでは、出るのは無謀だけど。


(植物、魔物の情報そして、“あの国の地図”で国境としてたライン。)

セリの情報でもう少し範囲が狭められる筈だと分かっている。


「教会の情報から探した方が良いのカシラ?」


たぶん地元の人間しか知らないような辺鄙な場所と言われてた。


“昔の衰退した国が作った建物かもしれない”

なんて話がセリの記憶にあった。壁画は誰かの悪戯では?と話していたものだ。


“そこにお化けがいる”って子ども達を怖がらせた大人に酒を禁止したのは

思い出だろう。


あの孤児院は人が出て行く。

止まる時間をくれるけど、それは出て行くことが前提。


子供達もそうだ。教会で見送る役目は、シスターと神父様だけ。


神父様は片足が悪くて、寒い時は辛そうだった。

シスターは目がよく見えなくなってきている。


それでも、旅立つ日を見送ってくれる。


わたしは、孤児院の様子を確認したら

(どこに行くのだろう?)


「セリ?」

ロードの顔を見る。何回か呼ばれていたようだ。


「どうした?どこか辛いか?」


過保護だ。

泣いたせいだろうか?そしたら申し訳ないけど。


自分でも泣くと思わなかった。安心な寝床に、おいしくお腹いっぱい食べれる環境で、気を張るというのは難しいものなんだな。


ぎゅうっと大きな体に抱きつく。

(ちっさい子どもじゃないんだけど、まあロードが喜ぶし。)


「おー、ラブラブか?」部屋に入って来たのはカナンだった。


顔を上げ視線を上げるとつい、ひと言。「…戻っちゃった。」

狼の耳はあるものの、制服を着たカナンだった。


「肉ばっかの生活も飽きるよー。野菜も食わなきゃね。」

ここでの食事に不満があったらしい。


「今度は気をつける。」

「もうないと思うけど〜。」


狼姿はお預けらしい。髪を乾かす魔導具を借りたから、使ってみたくなってたのに。


(ここには便利な魔導具が多いな)


いくつか買って持って帰れないかな。

温かな風、保温する器


清貧というより、“何もないなら作れば良い”だったから。


の他にもお金を手に入れる方法がないかな?


近くの人を巻き込むか。と企んでいたセリだった。

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