番外 グスタフ(研究者)


山脈と森か。



この極北の城より、もっと北。東の方の出身と思われる。

セリ。


彼女の知っていた、“おまじない”の検証をしている。

素材は、この地域によくある植物だ。染色されていたり、依って紐状にしたりと小物の作りにも特殊な箇所はなかった。


内職で作るアクセサリーやお守りとされる物だ。

街中で売っていたら、特に気にせず通り過ぎるくらいの…。


「よくある、小物だな。」

「アラ、何か秘密があると思ったのだケド。」


グスタフのところに持ってきて検証をした結果を言う。

シュルトは商品としての興味だな。

特に残念そうではないのは、それ程強い効果のある物ではないと思っていたからか。


「系譜としては、普及しているマークや結び方で作られている。

モデルは、古代の魔術だな。」


キースとも話したが、魔術的要素と魔力で効果にまで達した物。

魔術的な効果はそれほど強くない。

学術的な興味と、よくある素材でここまでのモノになっている

…要素は何か?


もっと昔には、家の扉にも飾ったような

魔除けや幸運を招く、捧げ物。それに類似する。


素材、魔力、印があれば簡易な物は普及していても

これほど均整の取れた物は少ないだろう。出来過ぎている程だ。


魔術的な物には魔力が必要、その効果の持続、強度と効力を得るには

介在する物には、高品質であったり貴重な素材を用いる。


おまじないの効果を失うことなく、成り立っている

特殊なのは、魔力か?


(加護の影響と断じるには、まだ根拠が弱い気がする。)


神の加護が物に宿る、付与ができるのは習熟した教会の人間か

魔術を研鑽している魔術師くらいだろう。


つまり、

ただの子供ができる技ではない。


しかし、おまじないに危険性や違法なものではないが。

何度見てもそれほど特色が見られる物ではない。


鑑定魔法での結果を待つか。


「ロードのつがいってだけでも大変だけど、特殊能力もあったりしたら助けになるのカシラ?」


そういえば、竜人の番だったな。

『竜の花嫁』という名の本が出ていたな。


竜人の執着は有名だ。

当のロードの様子は、過保護だが根本は変わっていない気がする。


番のセリも気負った感じはなかった。

興味を惹かれて学ぶ意欲ある子供という印象だ。


その後ろに居たのが、例の薬を使っている狼獣人か。

あの身のこなしや気配りは、裏でも働いていそうだな。


個性の強いものが集まったものだな。

今回の冬籠りは、研究対象が増えて楽しみだ。


おまじないを自作して、眺めてみる。


(他の素材でセリが作ったら効果がどうなるか?)

「いくつか用意しておくか。」


研究部屋で、素材の整理を始めたのだった。

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