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それから三十分経っても圭佑さんは帰ってこなかった。


私はショックを隠しきれないまま、テンション低くすずの歯磨きをする。今日は歯磨きの歌など歌う余裕はない。


「あー!すずがやるっ!すずがやるっ!」


「あー、はいはい。」


口に歯ブラシを突っ込んだがまったく磨けていないすずをぼんやりと眺める。


盛り上がっていたのは自分だけだったのだろうか。


私は圭佑さんとの結婚を真剣に考えていた。

すずのことも真剣に考えていた。

なにより、圭佑さんのことが好きでたまらなくなってしまった。だからこの先も一緒にいたいと思ったのに。


そう思うとますます落ち込みが激しくなる。

思わず泣きそうになってしまったが、すずの手前必死に我慢した。

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