おまけⅡ第3話 根岸光平 「空き地に到着」
指定された空き地は、思ったより広かった。
「4月1日OPEN」と書かれたパチンコ屋の立て看板が落ちてる。工事途中に倒産したのかもしれない。
基礎工事の途中だったみたいで、空き地の角には資材が置かれ、ブルーシートがかけられていた。簡易トイレまである。
「な、なんだ、お前ら!」
空き地に入ってきたのは上級生の坂田。まあ、こっちの大集団見たらびびるわな。
俺は人数を数えてみた。とちゅうで坂城秀とかいうヤツが加わったので28人だ。
上級生は8人。あいつら、俺と有馬をやるのに8人も用意するか。
「8人か。根岸くん、すいぶん強そうに見られたな」
横にいた飯塚が言った。
「いや、腰抜けってだけやろ」
「それを言えば、こっちは28人だ」
そうだった。俺は肩をすくめた。
「根岸くんは・・・・・・」
「コウでええよ、似あっとらんで自分」
「そうか。コウは荒っぽいことは?」
「まあ、普通かな」
「その口ぶりはそこそこ強いな」
プリンスは坂田に近寄っていった。
「ここにいるみんなは、ただの見学だ。今朝の二人、そして俺が相手をしますが?」
飯塚の言葉に俺も前にでた。
「待てよ、清士郎」
有馬が来た。
「その言い方じゃ、ケンカしにきたみたいだ」
「それ以外ないだろ」
「いや、ないない。だって今朝、わかるように殺気出しといたもん」
殺気? あれか。有馬は異様な雰囲気に包まれていた。
「自分の実力との差はわかってるのに、いまさらケンカしないよな?」
よな? と有馬は坂田に声をかけたが、坂田はポカンとしている。
「あのな、和樹、そういうのは武芸の有段者だからわかるの。あとは野生動物とか」
「んなことねえよ、わかるよな?」
有馬が坂田の肩に手を置いた。
「お前、ナメてんのか!」
坂田が有馬の胸ぐらを掴んだ時、となりの飯塚の空気が変わった。殴られる! なぜか自分がそう思って、思わず身を引いた。
「おや? 野生動物がいるようだ」
飯塚は俺のほうを見て、にやっと笑った。こいつ、けっこうやばいな!
「なんだ、わかんないのか」
有馬はそう言って、捕まれた胸ぐらをひょいと取った。
「お前は、うちの爺ちゃんに鍛えられすぎて、一般人の感覚を忘れてるぞ」
「おお、でも、まだ一歩も踏み込めないわ」
「当たり前だ。真剣持ってる相手に向かって打ち込もうとするのが、おかしい」
ふたりの会話の意味はわからなかった。ただ、武術か何かをやっているようだ。
「このやろ」
坂田が有馬に殴りかかる。危ない! そう言おうと思ったら、有馬はそれもひょういとかわす。
「ケンカじゃつまんないな。おおそうか!」
有馬が周りを見回した。何する気だ? すると大きな棒を持ってきて、土の地面に大きな円を書き始めた。
「あっ、ちょっと、そこ避けて」
円の中にいた俺や上級生たちを避けさせ、円の中央に二本の線を引く。コレって・・・・・・
「よしっ、相撲しようぜ!」
「なんでやねん!」
俺は今日初めて会ったクラスメートなのに、本気でツッコんだ。
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