3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル。剣と魔法の世界に召喚された高校生はざまぁかましてエルフの廃墟でのんびりスローライフのつもりが人類の危機に立ち上がり団結チートで国を相手に無双する
おまけ第1話 有馬和樹 「里の収穫祭は大にぎわい」
おまけ第1話 有馬和樹 「里の収穫祭は大にぎわい」
今日は宴会。
朝イチで決めたから昼には始めるかと思ったが、無理みたいだ。いざやるとなったら、どうやらそれぞれ、趣向を凝らしたいらしい。
結局、昼の間で準備をして、夕方から始まった。
名付けて「菩提樹の里、第一回収穫祭」だ。
村の大通りに、ポンティアナックとの戦いで張った綱がある。今日はそこにパンツではなく布を三角に下げて光らす。
その下に各家から運び出したテーブルを並べ、各家の自慢料理が並んだ。
光ってはためく三角旗、その下に並ぶ露天。お祭りムードとして最高だ。
遊び心で一人五枚、葉っぱを持つようにした。貨幣のかわりだ。金の代わりというわけではないが、どの屋台が一番人気だったか、これでわかる。
おれとプリンス、ゲスオは三人でその大通りをブラブラと歩いた。
ひときわ人が集まっている屋台があった。やっぱり調理班か。列に並んでみる。
一番前になった時、バナナのような大きな葉に包まれたそれが何か、すぐわかった。
「ハンバーガーか!」
調理班リーダー、喜多絵麻が恥ずかしそうに笑う。
「前に出せなかったハンバーグが残ってたから」
「でもパンズは、このための特性だよ」
横で顕微鏡スキルの土田清正が胸を張った。
「あれ、今日は二人? ほかのメンツは?」
調理班は一番人が多いはず。それが喜多と土田しかいない。
「セレイナはステージの準備」
なるほど。今日も、あの歌声が聞けるか。
「花ちゃんはハビスゲアルさんと病人の看護」
回復スキルの花森千香。そうか、まだ起きられない怪我や病気の人もいるもんな。あとで二人に差し入れでも持っていくか。
回復スキルや回復魔法を使いすぎないほうがいい。これはハビスゲアルの提言だ。治癒力を劇的に上げる回復は、頼りすぎると身体が弱くなるらしい。
そして治癒力を上げるだけでは治らない、今回の疫病のような例もある。魔法やスキルってのも万能じゃないな。
「友松は?」
「あやちゃんは、子供の健康診断するって。しらみや虫歯がいたら、除去できるから」
これもなるほど。なにげに友松あやの掃除スキルが、一番のチートな気がする。それに、兄弟の多い友松らしい目の付けどころ。
「あのぅ……」
喜多絵麻が、もじもじしてて気づいた。何も注文してない。
「あっ、ハンバーガーを一個」
ハンバーガーは、一人一個食べると腹がふくれてしまう。三人で分ける事にした。
「それからな、二人とも……」
おれが聞こうとする前に、土田が答えた。
「全面的に、姫野が正しいと思うよ。もし黙って行ってたら、怒るよ」
あちゃ。じつは黙って行くかとも考えた。しなくて良かった。喜多絵麻も微笑んでうなずいた。まあ、納得してるのならいいか。
ハンバーガー屋の隣には、野呂爽馬さんがいた。ノロさん、わかってるね。ハンバーガーには飲み物が必要。
「キ、キングくん、いくついる?」
「とりあえず、一個で」
「わ、わかった」
ノロさん、鉄製の水差しに茶葉を入れ、スキルをかけた。あれ? 一個だからカップに直接でいいのにな。
「しばらく待ってください」
しかも待つ? わからないけど、お茶の名人の言われた通りにする。
三分経ってアラームが鳴った。
ノロさんは水差しを大きなカップに注ぎ、隣にいた吉野に渡す。吉野由佳子、マスクのスキルを持つ農業班の女子だ。今日はノロさんの手伝いか。
吉野はカップを受け取り、別の瓶からトロリとした物を入れてかき混ぜる。
「それなに?」
おれが聞くと、吉野が得意げに笑った。
「蜂蜜」
わお。とうとう農業班、蜂蜜まで手を伸ばしたか。
次に果物のような木の実を半分に切り、その汁をカップに絞った。この匂いは、もしや……
そのカップを後ろにいた女子に渡す。黒宮和夏だ。
黒宮は鉄の箱を開けた。中にぎっしりあるのは砕けた氷!
「はぁい、アイスレモンティー」
やっぱり! 一口飲む。うまい! 横からゲスオが素早く取った。
「むふぅ。この甘酸っぱさ。まるで初恋の味」
「ゲスオの初恋は二次元だろ」
プリンスがさらに横から取った。
「むむ! 拙者、まだ一口しか飲んでおらぬのに!」
懐かしいな。昔にこうやって四人で祭りに行ったな。そういや、ドクは何してんだろ。
「それに、拙者は初恋ぐらいあるでござるよ。ないのは超鈍感な二人ぐらいでござる」
おれらのこと? プリンスと目が合った。反論できないのでプリンスも肩をすくめた。おれもプリンスも、そういう話に縁がない。
「まったく、二人とも、精神年齢が小6で止まってるでござる。……おお、あれは菩提樹クッキー!」
ゲスオが走り出した。どっちが小6だよ。
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