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「アルトさんたちもいらしていたんですね。先ほど教皇から〝魔人を倒してこい〟と
「どうやら経緯は一緒みたいだな。いくら何でも文句のハードルが高すぎる。カルテガを超えないとろくにレベリングもできないし困ったもんだよ」
話していると、監視場にはまた新たな人影が。騎士団長のパーシヴァルだ。
「こんなところで何をしている。まさかキルゾーンでレベリングをするつもりか?」
「いいや、カルテガのお偉いさんに頼まれたんだよ。魔人を始末してこいって」
「魔人? この先に魔人がいるというのか?」
パーシヴァルは
「何だよ知らないのか。教皇と大司教さまは自信満々に言ってたぞ」
「そんな情報は耳にしたことがない。が、居てもおかしくないだろう。元々確認されてはいた場所だ。未だ姿を隠しているのかもしれん」
「そうか……まあどっちにしろ行って確かめるしかなさそうだな」
封鎖区域へと踏み出そうとすると「待て」と肩を掴まれる。まだ話があるらしい。
「知っているとは思うがここから先はキルゾーンだ。HPが0になった瞬間に、世界から消滅する。特に奴らはお前を潰そうと
「もちろん。まったく怖くないかって言うと嘘だけど、どのみち魔人は倒さなくちゃいけない存在だ。早いか遅いかでしかない」
「まったくもってその通りだな。しかし……」
パーシヴァルは難しい顔のままああでもないこうでもないと呟いている。俺たちの身を案じてくれているんだろう。あるいは同行すべきか迷っているのかも。
「心配しなくても必ず勝って帰ってくる。パーシヴァルがここを離れるわけにはいかないだろ? もし本当にやばそうだったらチャットするから」
「……了解した」
パーシヴァルはまだ言い足りなそうな顔をしていたが一息つくと、「死ぬなよ」と送り出してくれた。――俺たちは封鎖区域へと立ち入った。
「ククク、打って変わって空が薄暗くなったのだ。ここがキルゾーンと噂のエリア……良いぞ良いぞ、血沸き肉躍るではないか」
ペルが開口一番で厨二病を発症した。エレンを除いて他の皆もやや浮かれた様子。
「もうちょっと気を引き締めろよ、いつ魔人が襲ってくるか分からない」
「大丈夫よ、だってみんなもう三次職なのよ? 魔物の一匹や二匹、目じゃないわ!」
「まあ……そうだといいが……」
コトハの見立てはあながち間違いではない。こちらの数は七で、ジョブは全員三次職。ハヌマリル如きなら容易に倒せるだろう。もしもメルクトリがいた場合は……かなり怪しいだろうけど。
道中はさほど問題ではなかった。廃墟と化した街並みを歩いていきながら、ついでに雑魚モンスターを駆除していく。元より封鎖区域の適正Lv170から190。以前ならともかく俺たちの脅威ではない。
黒薔薇教会に入ったらどう立ち回ろうか。あそこは破格の湧きだしMOB一体一体が通常MAPのMOBとは思えないほど強い。まずは安全に近くのモンスターのターゲットを取って――などと考えを巡らせていた時のことだった。
『ッ!!?』
空から赤色の光線――いや光の壁が降りてきた。壁は俺たちを分断し内側にペルだけが取り残されている。さらには
〝ここから先に侵入することはできません。黒薔薇教会の最下層へと進んでください〟
壁に近づくと、ふざけた警告文が表示された。あいにくと斬ろうが焼こうが半透明の壁はびくともしない。確かに侵入不可のようだ。
「何だよこれ、クソ……このままじゃ危ない、ペルは直ぐに監視場に戻れ!!」
「む、無理なのだ! 出口にも光の壁があるのだ!」
「ギルドハウスへの転移は!?」
「ブラックアウトしていて、使用できない……」
本来であればこんな仕様は封鎖区域に存在しない。おおかた魔人の仕業だろう。分かっていたとは言え、パーシヴァルが危惧していた通りの展開になってしまった。
警告文からして解除の条件は恐らく、黒薔薇教会のB2に到達か、魔人の討伐だろう。よほど俺を誘い込みたいらしい。ペルを助けたくば挑んで来い、ということか。
そうこうしている内にもモンスターは次々とポップする。グレムリン、パズズ、インプ、フェネックなどなどが群を成してペルへと押し寄せる。
「ククク、だが問題はないのだ! たかがこれしきの相手、我が
ペルがサモンⅢを発動。スケルトン、ゴーレム、ガーゴイル、ゴーストアーマー、スカルアーマーが正面からモンスターと衝突する。戦況は遥かにペルが有利、しかしサモンⅢには効果時間がある。長引けば……無限湧きするモンスターに
「ペル、少しの間だけ耐えていてくれ。必ず助けに戻る」
彼女は
人質めいた手を使ってくるなんて、魔人さまは相当お冠と見える。俺にどんな怨みがあるのか分からないが、上等だ。絶対にぶっ飛ばしてやる。
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