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「教皇と大司教があなたたちをお呼びです。至急、皇室へと同行願います」
聖職者の男が言った。
またもや身に覚えのない強制イベント発生か。教皇と大司教と言うと――この都市でも最高の権力者たちだ。そんな彼らが俺たちにいったい何の用だろう。
「どうぞこちらへ」
男が先頭に立って誘導する。周りには逃がすまいと何人もの聖職者が。同行というかほぼ連行といった風だ。最上階の奥、仰々しい扉が開かれるとそれらしい人物が見えた。
教皇の方は権威を示す
「カルテガへようこそ冒険者諸君。私はディート。この都市の最高権力者、教皇を務めている者だ。そして彼はアグニス、大司教――都市のNo2と言った方が分かりやすいか。何れにせよ高位に就いている者だ。くれぐれも敬意を欠かさないでくれたまえ」
淡々と言うディートの表情は固い。俺たちに話があるようだが……あまり良いイベントだとは思えないな。教皇さまも大司教さまも酷い仏頂面だ。果たしてこれから何をされるのやら。
「ここ最近、魔人による脅威は増すばかりだ。噂によるとバルドレイヤでは魔人が大量のモンスターを率いて攻め入ってきたらしい。それだけでなくプロフィール情報の改ざんや冒険者へのなりすましも可能だとのこと」
ディートは一息ついてから続ける。
「――さて本題だが、今日都市へと踏み入ってきた冒険者は果たして、本物なのかどうか。冒険者を装った魔人ということもあり得る。もしそうだとすれば都市へは置いておけまい。直ちに追放すべきだろうな」
なるほどそういうわけか。どうやら彼はバルドレイヤの一件を詳細に把握しているらしい。だが魔人かどうかを判別する方法なら知っている。殴ってみればいいだけだ。当たり判定の有無で、モンスターサイドかどうかハッキリできる。
「だったら、この場で俺たちを攻撃してみてはいかがですか。仮に俺たちが魔人であればダメージを負うはず」
一帯は
「君たちには身の潔白を証明してもらう。情報によれば
ディートの提言は完全に俺の意見を無視していた。
「待ってくれませんか教皇、そんなことをしなくても攻撃しれみれば分かることで――」
「いいや分からない。私たちにはそんな情報聞いたこともないのだからな」
これまで静観していた大司教、アグニスが会話に入ってきた。
「その通り。いま信じられるものは事前に知っていることだけ。魔人かもしれぬ相手の意見など、どうして信用できようか。君たちに与えられた選択肢は二つに一つ。魔人を倒しに行くか、バルドレイヤへと帰還するかだ」
ディートがここぞとばかりに畳み掛ける。なるほど、本当にまったくこれっぽっちも信用されていないようだ。魔王を倒すためには先のエリアに進む必要があるし、レベリングに関してもそうだ。よってここで帰るという選択肢はあり得ない……のだが……。
「黒薔薇教会か……」
キルゾーンのことを考えれば、自然とため息が出てしまう。魔人の居場所が割れていることは
「大丈夫よ、私たちを信じて」
コトハが言うと他のみんなも頷く。みんな覚悟が決まっているようだ。それなら――。
「分かりました、その依頼を引き受けましょう」
俺の返事にディートとアグニスが
「いい返事だ、是非とも健闘してくれたまえ。――それではまた」
ディートが手を上げると、周りの男たちが再び動き始める。行き先からしてギルドの出口……いや都市の出口まで連行か。魔人を倒してくるまで本格的に立ち入り禁止らしい。
決してキルゾーンでへまをするわけにはいかないな。できる限りの手は尽くさないと。
俺はスキルリセットポーションを飲み、スキルの再習得を始めた。
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