193
「
コトハが言った。
「タイムアタックの略称だよ。ダンジョンなどをどれだけ早く攻略できるか、タイムを競う時に用いられるんだ。基本的にタイムは早ければ早いほどいい。それだけ動きやルートに無駄がない、
「――よく知っているじゃないか。二次職にしては上出来だ」
カーリグルが嫌味ったらしい拍手を送ってきた。
「だがただのダンジョンやマップでTAとは面白みに欠ける。ここはID〝セレヌス山脈〟で競おうじゃないか。もちろん君が
不敵な笑みを浮かべてカーリグルは言った。
彼が口にしたIDは、通常のIDとは異なる性質を持っている。本来ダンジョンにはボスがつきものだが、セレヌス山脈ではボスがいない。MAPもかなり特徴的で、崖をひたすら上に登っていく造りとなっている。きちんと整備された道なんてどこにもない。
ダンジョン攻略の条件は、山頂に辿り着くこと。空中には冒険者を邪魔しようとデバフ持ちのMOBが多数いる。つまり〝早さ勝負〟という意味では、セレヌス山脈がおあつらえ向きのIDだということだ。
いかにMOBの攻撃を躱し、崖を昇っていくかが勝利の鍵だ。
「勝てる勝負で怖気づくなんてとんでもない。フリーウィンを頂くとしよう」
呟いた瞬間に、カーリグルの
「ほざけド三流。僕から言わせてもらえばむしろ君にはハンデが必要だと思うね。格下の君に勝っても、僕の品性が問われるだけだ」
「今さら品性を気にするのか? なら散り様が
「君は――」
カーリグルはインベントリから直剣を取り出した。顔には
「ね、ねえちょっと!」
俺の
まさに一触即発の状況下で、それでも彼はそれ以上のことはしてこなかった。決闘申請もしてこない。
「そうかそうか、つまり君はそういう奴だったんだな。……いいだろう、なら正々堂々と競い合おうじゃないか! どちらが先にIDから帰ってくるか本当に見ものだ!」
怒声を飛ばすとカーリグルは
「おにいちゃんだいじょうぶなの? そこのIDはまだ行ったことないと思うの。初見なのにTAで勝負するから、リズは心配だよ」
彼女が俺の手を取って言った。
「われも同じなのだ。アルトくんのことだから大丈夫だとは思うが……」
「ククク、お兄さまならきっとやり
フィイとペルもまた曇った顔つきをしていた。
「問題ないさ。勝ち方は知ってる」
「知ってるってアルトは初見じゃないの?」
「コトハなら分かるだろ、今まで散々IDを攻略してきたんだから。今回も今まで通り、最高効率の最高速度でやるだけさ。たとえLvがあっても勝てる方法があそこにはある」
きっぱりと言い切ると、彼女たちからの異論は止まった。不安が晴れたように満面を笑みで彩っている。
「あのねお兄さん、わたしたちも
アッシュが言った。
肝心の勝負はエオタート
ギルドに加入すればギルドハウスの
現段階で、彼女たちを
「悪いけどここでまっててくれるかな。終わったらすぐに戻ってくるから」
「うん……分かった」
観戦できないことが残念なのだろう。アッシュは少しだけしょげた顔をしていた。
「あのね、こんなことしか言えないけど……がんばってねお兄さん!」
「そうだぞ、がんばれよ兄貴!」
転移直前で、アッシュとメルが声援を送ってくれた。まさか彼女たちに応援してもらえるとは。子供心ながらに、事態を何となく察してくれたのかもしれない。
この勝負……絶対に負けるわけにはいかないな。
俺たちはアウラからエオタート
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます