181
「コトハ、もう加減しなくていい! ひとまずは周りの雑魚を片付けよう!」
「ええ、もちろん!」
大勢の一般モンスターにボスモンスターそしてヘズシルパーティーと、この場にはあまりにも敵が多すぎる。一斉に攻撃されたら泣きを見るのはこちらだろう。
「みたまえよアルトくん! マンティコアがさっそく動き出しているのだ!」
だが怪物は俺たちにちっとも優しくない。こちらは雑魚の
「――躱せ!」
ついぞ放たれた紅蓮の息吹が、体のすぐ横を通り過ぎる。
幸い俺たちのパーティーに浴びたものはいない。それでも威力のほどは、巻き添えになったモンスターたちを見れば分かる。ハーピーもカーバンクルも既に跡形も残っていない。
「業腹だが……やるしかないか」
スキル〝等価交換〟によってステータスを筋力に全振り。代償として今回シューティングスターは使用できないだろう。雑魚を一掃するための必要犠牲だ。
「コトハは前から溶かしていってくれ、俺は後ろのMOBを叩きのめす!」
「分かりやすい作戦ね。そういうの嫌いじゃないわ!」
前へと一歩を踏み出した
やにわに空から降り注いできた多量の大岩はスキル〝ダウンプア〟。ボスモンスターによるAoE攻撃だ。
「主は
フィイが新たな魔法陣を形成。教会の模様が刻まれたそれは、あらゆる
「ど、どうして180Lvのくせに三次職のスキルを……」
俺が召喚した弓矢の大軍勢を見て、ジャニアが
フェリルノーツが後衛陣を
「はあああああああぁぁ!!」
スキル〝影裂き〟により視界内のモンスターを一閃。さらに稼いだコンボ数によって百花繚乱のコンボボーナスが上限に到達。〝破滅の影〟を
「そんなの冗談ですよね、たったひとりで周囲のモンスターを全てだなんて……」
単騎で無双する少女を目に、ヘズシルが呆然と立ちすくむ。
あいにくと、スキルも持たない一般MOBでうちのバーサーカーは止められない。当然、被ダメージなど期待するだけ無駄だ。彼女のPSならノーダメで殲滅してみせる。
「奇麗になったな」
セヴィオスの効果時間が切れたと同時に、雑魚モンスター退治が完了。あとは彼らとマンティコアを始末するだけだ。
「く、くそ……早くやらぬか! マンティコアよアルトパーティーを壊滅させろ!!」
フシャスが
彼の期待に応えるかのように、キメラが
「見ての通り一帯は猛毒の沼だ、ここは短期決戦でいこう。――回復スキルは全てコトハに回してくれ。俺は無しで構わない」
「しかしそれではアルトくんが」
「大丈夫だフィイ、言っただろ短期決戦で行くって。今回は
俺の狙いを察したのだろう。フィイはそれ以上言及してこなかった。
「なら一撃で仕留められるように、わたしが削っておくわね!」
言うが早いか、コトハが一目散に駆け抜ける。
鋭利な爪での引き裂き、サソリの尾による毒針攻撃、獄炎ブレス――彼女はそれら全てをいとも簡単に
マンティコアのHPが凄まじい勢いで削れていった。
「ええい、指をくわえて眺めている場合ですか! みなさん今がチャンスですよ、この間に彼らを――」
薙ぎ払ったデスサイズから、黒の斬撃が飛翔する。
〝ソウルハーヴェスト〟必ず対象を捉えるバインドスキルだ。これで邪魔立てを封じさせてもらう。
「俺たちを何だって?」
「馬鹿な、また三次職スキルを……」
ヘズシルが苦虫を食い潰したような顔をする。
バインド状態の効果時間は五秒。欲を言えばお喋りする時間がほしかったが、充分だ。それだけあればマンティコアを討伐できる。
「――頃合いだな」
猛毒によって俺のHPは残り二割。瀕死になったおかげで〝
さらにリズの能力超強化型イージス〝ST-987〟が俺へと付与される。
「な、なんだこの輝きは!?」
仕上げにアークメイジの
何重にもバフが上積みされた今、フェンリルボウが満を持して一条の弓矢を掛け放つ。――本日二度目のフェリルノーツが召喚された。
俺にとって誤算であったことは彼らがボスモンスターを呼び起こしたこと。しかし彼にとって誤算であったことは、それをも処理しきってしまう俺たちの殲滅力だ。
マンティコアのHPは残すところわずか三割。とは言えたったひとつのスキルで終わらせてしまうとは思いもしていないようで。
「っ!!?」
ヘズシルたちは完全に言葉を失っていた。目を見開き、呆けた面で佇立している。
マンティコアはもういない。
「二秒やる、
今さら彼らとおしゃべりするつもりはない。俺はフェンリルソードと盾を取り出した。
「こ、このインチキ冒険者め! 調子に」
「――乗るんじゃないわよ」
いつしか後ろを取っていたコトハがフシャスとジャニアを両断。それぞれ一振りずつでワンパンしてしまった。残りはパーティーリーダーのヘズシルだけだ。
「何を、こんなのあんまりですよ! わたしとあなたたちでは50Lvも離れているのに、ただの
「面白いことを口にする。人を騙したあげく、MPKを狙った害悪行為はマナー違反にならないのか」
「分からないんですか!? アルトさんのしていることは異常ですよ!」
「どう異常なのか教えてくれ。俺にはお前たちの方が異質に見える」
「それは」
ヘズシルはおもむろに短剣を取り出した。そして一切の
「なっ……」
だけどどうせそんなことだろうと思っていた。信用していればこの局面でわざわざ
「待っ話を――」
聞く必要など何処にもない。俺はフェンリルソードを振り下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます