152(背信)
レイドボス、バフォメットの消滅に合わせて一帯は
泣き叫んで喜ぶ者、互いの健闘を
反応は人それぞれだったが、
「やってくれたなぁアルトくんよ、よもや
騎士団長メルクトリが俺の肩を叩いてきた。
「一時はどうなるものかと思いましたが、上手くいって良かったです」
「いやはや見事な手際だった――だがもう少し気を
「はは……すみません、悪気はないんですけど」
「有無。以後は気を付けたまえよ、まあ気にするほどのもんではないがなぁ!」
ガハハと
「モンスターが残っているかもしれん」と念のため騎士団に指示を飛ばしている。
見た目の割に抜け目のない男だ。
……いや待てよ……今の
たとえキルゾーン中だろうと、
じゃあどうしてメルクトリは俺に言い掛かりをつけた。どうして彼はレイドボス戦中にほとんど姿を消していた。
よくよく考えてみれば、彼の言動には不審な点ばかりだった。
たとえば都市戦――俺のスキル構成を常に知りたがっていたのは誰だ。エレンと対峙した直後にモンスターが襲撃してきたのは偶然なのか。
もっと
あまりにもしつこい騎士団への勧誘はまるで俺をこの都市に留めておくようにも思える。たかがいち冒険者に100億ルクスで交渉だなんてあり得ない。
なれば俺を必死に騎士団へと推薦していた者は、あの時にコロシアムで俺を監視していた者は、常にこれらの中心にいた男とは――。
「まだキルゾーンは適用されているようだな。モンスターが残っているようには見えないが一応、
パーシヴァルもまた自身の騎士団へと指示を飛ばす。だが俺にはその必要性はことさらないように感じた。
「なあパーシヴァルさん。キルゾーンの終了条件って何でしたっけ」
「今さら何を〝全ての敵を殲滅すること〟だと言ったはずだが」
「その敵って言うのは
「……ああ」
「だったら探すまでもないと思いますよ。怪しい奴なら近くにいるじゃないですか」
「なるほどその通りだ」
パーシヴァルが小さく鼻で笑う。俺の言わんとしていることを察したのだろう。常に俺の動向を見ていた彼だ。きっと最後の一体が何処にいるのかも、とっくの昔に導き出しているはず。
「さあさあ冒険者たちよ、
メルクトリがお開きだと手を鳴らして伝える。
あからさまな人払いで俺もつと口角を吊り上げてしまう。騎士団も冒険者もいなくなった彼はいったい何をするつもりなんだろうか。答えは考えるまでもなかった。
「その必要はないよメルクトリさん、敵の目星なら付いてる」
男の眉根がピクリと反応する。
「ほほぉ面白いことを口にする。ではその目星とやらを聞かせてもらおうではないか!」
「それは――」
言いさした刹那。
「ッ!!」
メルクトリの大剣が横に一閃される。狙いはこちらの胴体。予期せぬ不意打ちがあまり対応を遅らせてしまう。〝生存本能〟がなければ間違いなく即死していた。
きっと奴はこの時のために俺のスキルを知りたがっていたんだろう。こちらの存命を気にも留めず即座に追い打ちを仕掛けてきた。二撃目は縦の振り降ろし。
はたして間に合うか。回避は困難――パリィも不可。インベントリから盾を取り出すのがせいぜいで構えることもままならない。
大剣が迫る。死が這いよる。まさかこれだけの人がいて堂々と攻撃を仕掛けてくるとは考えもつかず――。
『……貴様』
結局のところ防御は間に合わなかった。いや間に合う前に二人が反応した。
俺を
胃の奥底からせり上がってきたかのような、重く低い声が鳴ったのもほぼ同時のこと。二人は
「おぉほほ! 反応されてしまったか! こりゃあマズイ、やはり戦闘中にぶっ殺しておくべきだったかもなぁ! ガハハハ!」
もはや取り
頭上の表記はいつの間にやら〝Lv315 魔人メルクトリ〟に
どういうことだ、プロフィール情報は捏造不可だと言っていたはず。いやそれすらも嘘だというのか。
加えて奴のHPは
第一Lvが高すぎる。315なんてほぼカンスト手前じゃないか。
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