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「で、お前はここに何しにきた。今は都市戦のはずだろう」
北の監視場に訪れると、パーシヴァルから憎まれ口を叩かれた。
「何をって様子を見にだよ。封鎖区域の奥にはモンスターの軍勢がいるじゃないか。それで居ても立っても居られなくてさ」
「よくもまあ……抜け出せたものだな。アレらがいると言うのに」
「ああ、アレらな……」
間違いなくコトハたちのことだろう。パーシヴァルが憐れむような目で見てくる。
実際、彼の見立て通りなのが辛いところだ。ひとりで監視場に行きたいと言ってもなかなか許してもらえなかった。コトハとロリっ
ここ最近、俺に自由が無いような気がする。これでもギルドマスターなんだけどおかしいな。
「話を戻すが、君がここに来てもできることなどひとつもない。むしろ邪魔になるだけだ」
「まあそう言うなって。騎士団としては――やっぱり待つしかないのか?」
「何が言いたい」
「だから攻め込まれる前に潰しちゃわないかって言う提案だよ。あいつらの居場所は判明していることだしさ」
「君は本当に……」
わざとらしく
「以前、勝手に侵入した挙句、逃げ帰ってきたではないか。奴らの勢力が予想を遥かに上回る規模だと分かっただろう。更には魔人なる存在も確認できた。わざわざ向こうの陣地で戦う
「それは……確かにそうだ。俺が思っていた以上の数だったことは認める。だけど騎士団がいるなら話は別だ。総戦力は間違いなく俺たちの方が上。やろうと思えば一時間も経たずに始末できるだから――」
「何をそんなに焦っている。らしくもない言動だぞアルト。それともまさか君が魔族に
パーシヴァルの冷ややかな声音に当てられて、言葉が詰まる。
「そこまでして攻め入れなければならない事情でもあるのか。私がここで勝てると言っているのだ、二言は無い。君の言動はむしろ騎士団を無理やりキルゾーンに誘導させようとしている風にしか見えない。或いは君の正体が魔人であるというのなら――ああ、私の監視下に置いて正解だった」
いくら何でも話を急ぎ過ぎたか。ここは……きちんと
「俺は怖いんだよ、モンスターの襲撃が。騎士団の強さは信じてる、だけどもしバルドレイヤで誰かが消滅――いや殺されたら俺は自分を許せなくなりそうで。
だってそうだろここは――俺がよく知っている世界だ。モンスターの倒し方も熟知している。それなのにもし犠牲者を出してしまったら必ず後悔すると思うんだ」
「……なるほど」
たった一言呟いたきり、パーシヴァルは切っ先を降ろした。
てっきりまた「ならん」とか捨て吐かれると思っていたけど、
「だが、君が敵ではないということだけはハッキリさせておかねばならないだろうな」
「敵って?」
「ふむ、そうだな。たとえば――」
言いさした刹那、パーシヴァルは両手で直剣を構え直し、横に一閃。
「なっ――!?」
剥き身の刃は俺の体を貫通して、
目にも止まらない速さの不意打ちだった。
「なるほど」
「いやなるほどじゃないだろ! 死ぬかと思ったぞ!」
俺の抗議もどこ吹く風で、騎士団長さまは剣を収める。
「そう怒るな。これで君が魔人でないと判断できたのだ。ダメージも無し問題はあるまい」
「確かに、通常時はプレイヤー同士の攻撃に当たり判定は無いけどさ……まさかその性質を利用して俺がモンスターかどうかを見極めるなんて、つくづく
「ただ一度、肝を冷やしただけで後の信頼を得られるのだ。安い
悪びれもなく言う彼には、何を訴えても無駄な気がした。
「待てよ……それじゃあ〝俺の命を狙ってる〟やつも同じ要領で割り出せるんじゃないか。もし都市の中に魔人が
「……バルドレイヤにはいったいどれだけの人がいると思っている。あの少女たちに
「……あながち否定できない」
ほぼ同じタイミングでパーシヴァルと溜め息をつく。
なんだかんだで彼と馬が合ってきたかもしれない。
フィイ:アルトくん、もうそろそろ戻ってきたまえよ。コトハくんの試合が始まるのだ。
と話に終わりが見えたところでフィイから個人チャットが飛んできた。これはのんびりしていられない。早く決闘場に戻らないと。
「今日はありがとうございましたパーシヴァルさん――それじゃあまた!」
やや乱雑な挨拶を交わして来た道を戻る。
コトハの次の対戦相手は……シンフォニア、楽器をメイン武器とするジョブか。これはかなり苦戦しそうだ。
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